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さてさて、そもそもこの「夏クラ」の企画の大元はこの本の存在があったから。これと、もう一冊の本(次に読みます)を見かけて、んじゃ古めの未読SFいくつか読んで見るべえ、と。イアンド・バインダー「ロボット市民」。青田勝 訳、創元SF文庫1972年4版→amazon(ユーズドのみ)。
チャールズ・リンク博士が作り上げた知能を持つロボット、アダム。「彼」はリンク博士の指導の下、徐々にその「イリジウムのスポンジ」である人工知能に知識と経験、思索と感情を蓄えていく。その金属製の見た目を別にすれば、アダムのふるまいや物言いなどは、生身の人間とそれほど変わりない物に見えてきたころ、リンク博士はアダムを世間に公開し、彼を知性と意識を備えた市民として社会に認知させようと計画する。だが、そんな矢先に発生したアクシデントが、アダムを窮地に追い込むことになるのだった…。
いうならば「鉄腕アトム・アダルト」、という感じか。「アトム」が少年漫画のフィールドで、ロボットと人間の関わりみたいな物を描写していたとするなら、こちらはもう少し大人の読者を対象に、同じテーマを、認知→誤解→誤解の解消→さらに大きな誤解と厄介な敵対者との軋轢→度外れた危機的状況→大団円、という順で描いていく。「アトム」ではなかなか描きづらい分野だったであろう、ロボットを一種の怪物と見なしてしまう多くの人間たちの誤解や偏見との戦い、ってあたりにそれなりのページが割かれているあたりが「アダルト」なわけね。
そりゃ初出が1965年ということで、今となってはいろいろ古くさいと感じる表現も多いし、全体としては楽観的すぎるだろうという読み味ではある(そこがまた良いんだけどね)んだが、それでも序盤での「イリジウムのスポンジ」であるAIに、初めて人間的な知性の閃きのような物が生まれた瞬間の描写なんて言うのは今読んでもそんなに古いものとは言えないんじゃないだろうか。単純な情報の蓄積だけでは、それはただのデータの集まりのままだけれど、それらのデータたちに記憶という経験の蓄積が作用したときに、なんて言うのかな、情報のシナプス間にジャンプが発生したときが知性の仄めきなんだ、っていうのは今のレベルから見ても結構説得力のあるものだと思える。いわゆるハードSF的な表現のたたみかけが(ネタが揃ってないものだから)使えない分、それなりに判りやすい描写を使って表現したい事を説明する、ってのが逆に新鮮に思えるんだよね。
そんな序盤のツカミが結構魅力的だったので、んまあいろいろ古いだろとか甘いだろとか、言いたいこともなくはないんだけど、古き佳きSFのかわいらしさ、みたいな物を楽しめた、ってところでは良い本だったと言えると思います。自分がガキの頃はもうちょっと暗いSFの方が主流を占めてた(公害問題とかが大問題になってた頃だしね)ものだから、それより前の時代のSFの明るさに触れると、やっぱちょっと嬉しくなってしまうんだよな(^^;
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●わー!ロボット市民!ラストが好きでねえ。「古き良き時代のSF」という意味で(笑)
いい感じにヌルいんですよね。とは言えこのお話、ロボット君たちにとってはハッピーエンドなんだけど、生身の人間は結構な数死んじゃってるんだよなあ(^^;。