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R・D・ウィングフィールド 著/芹澤恵 訳
カバーイラスト 村上かつみ
カバーデザイン 矢島高光
創元推理文庫
ISBN978-4-488-29106-8 \1300(税別)
ISBN978-4-488-29107-5 \1300(税別)
冬のデントン。窃盗したお宝を、被害にあった家の寝室の枕カバーにくるんで持ち出す連続窃盗犯、8週間前に行方不明となった幼い少女、深夜、街娼に対する連続暴行殺人魔…。引きも切らず発生する事件に対し、デントン暑が打てる手数はあまりに少ない。それでなくても足りない人員なのに、例によって上の覚えしか眼中にないマレット署長の一方的な効率主義とうわべだけの相互扶助姿勢が、さらにデントン暑の人員を削っていたのだった。そんな中、そこらに迷惑かけつつもなんとか事件の解決を図るフロスト警部だったが、転属して彼の部下となったモーガン刑事は能無しの女好き、それでなくても大混乱のフロストの仕事をさらにややこしいものにしてしまっていたのだった。
そんななか、また新たな事件がフロストの元に舞い込んでくる。8週間前に起きた少女の失踪事件、あれに限りなく類似した事件がまた発生したのだ…。
5年ぶりのフロスト警部もの、第5弾。いろいろ問題はあるけど、こと仕事に関しては一切妥協しないフロストと、そんな彼に辟易しつつもそんな彼だから最後の最後ではきっちり信頼している同僚や部下達、自分の出世しか眼中にない故にフロストを苛立たせる厄介な上司、前作で登場した上昇志向ばりばりの女性刑事リズに本作から新登場の、どうしようもない若造、モーガン、その他おなじみのメンツもいい感じ。
何より自身の直感を重視して捜査を進めて、そのために捜査がしばしばいらん方向に迷走する、なんてのはちょっとモース警部ものを連想したりもするけど、我らがフロストおじさんはあそこまでエキセントリックじゃなく、とにかく根っこにあるのが事件を解決したいという気持ち、それと非道な犯罪者に対しての、彼なりの正義感から来る憎しみ、みたいなものがちゃんと伝わってくるからこそ、このいい加減で下品なおっさんに、読んでるこちら側はそれなりの親近感と応援したい気持ちが湧くのだろうな。
そんな彼が、読んでるこちら側が先に「こんなヤツどうにかしたれよ」と思ってしまうくらいどうしようもない部下であるモーガン刑事を、それなりに叱責はするんだけど完全に遠ざけてもしまわない、ってあたりの距離感というのはどこから来るのだろうね。ダメなヤツなりに見どころはある(一応正義感、的なものはこのお兄ちゃん、持ってなくもないんだよね)から、と言うことなのか、フロストのどこかにあるダメ部分に、何か共鳴する部分があると言うことなのか、さて。ともあれ本作の隠し味はこの(モーガン君がらみの)辺にありそうではあるな。
全体のストーリー展開はいつものこのシリーズ・スタンダード。どう見てもキャパを超えた状態のデントン暑で、それでも自分の職務を(必ずしもキレイではない方法ではないとしても)全うしようと苦闘するフロストおじさんの頑張りぶりがなんとも楽しい。しばしば常識外れな所まで行っちゃうんだけど、その裏には必ず、事件を解決しなくては、という彼なりの信念がほの見えて、それがあるから彼のやるドはずれた行為も、それなりに納得できるものとしてこちらに伝わるようになっているのだよね。ここら辺の味がこのシリーズに通底している魅力の一つになっていると思う。
そんなわけで、シリーズ物の面白さをきっちり踏まえた、大変楽しい読み物になっていたとは思う。ただ、サービス精神がアダになったか、次々発生する事件の数々と、それらを捌いていく手並みの所でちょっと、異論無しと出来ないところもあったのは確かなところで。
個人的に、本書で発生する様々な事件の中で、最も道義的に許せないと思われる事件に対するオチの付け方が、自分としてはどうにも消化不良だったのがやはりどうにも引っかかりを感じてしまって。作者側的には自分とは違う価値観があって、このお話の中で真に重要なヤマはこちら(自分がそうだと思ってた方ではない方)なんだよ、と言うことだったのかも知れないけど、それでもやっぱりこういうオチの付き方はなあ、という気分は晴れないんだった。全体に風呂敷を拡げすぎた感、はちょっと無しとしないところはない。キャラの立ち具合、お話の流れ、総じて高いレベルで読み始まったら止まらない楽しさはあるんだけど、それでもちょっと、引っかかりがあることは否定できないな。
とは言え著者、ウィングフィールドさんはすでに鬼籍に入られていて、残るフロストものは1作しかないわけで、そこを考えると本作にも、何とも言えんレア感が加味されてしまうんだよな。不出来なところまでもなんだか愛おしい、みたいなね(^^;。
★★★★
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