ばむばんか惰隠洞

«前の日記(2008-05-01) 最新 次の日記(2008-05-03)» 編集

カテゴリ一覧

Anime | AV | Baseball | Books | CGI | Chinema | Comics | CS | Day | DVD | Event | F1 | Games | Hobby | HTML | Kindle | Misc | mixi | News | Oldbooks | PC | Photo | SpFX | Stage | tDiary | Tour | TV | web | 逸級介護士


2008-05-02 [長年日記]

[Day] マンガの中だけだと思ったら…

歩きながら物を読むのに夢中で、前方不注意で電柱に激突する人間、ってのを初めて目撃した。

本好きのメガネっ子美少女なんかじゃなく、教習所の入学案内を読んでるお兄ちゃんだったので萌えもクソもありゃしませんでしたが。

[Books] 遙かなる巨神 夢枕貘最初期幻想SF傑作集

9784488730017 夢枕貘 著
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
創元SF文庫
ISBN978-4-488-73001-7 \980(税別)

同名の短編集としては3度目の増補版。サイコダイバー・シリーズの原型となる「てめえらそこをどきやがれ!」、既出、新録の"タイポグラフィクション"を追加した短編集。

夢枕貘はSFマガジンの新人賞に応募したが一次審査も通らず、商業誌で作品を発表するようになるのは、奇想天外誌が登場した後と言うことになるのだそうで。言われてみれば確かに、SFマガジンには載りづらく、それ故他誌が歓迎したという結果が納得できる様な作品が並んでいる、と感じられる。「サンデー」じゃダメだけど「マガジン」なら巻頭カラーよ、みたいな。全体的なトーンが、なんというのかな、伝承ベースの怪奇譚のスタイルをとった怪奇SF風味の作品が並んでいる、感じ。

そんな中で、新規で追加された「てめえらそこをどきやがれ!」が明らかにお話のノリとしては異彩を放っているのが興味深いというか、短編集を編むという作業が案外難しいものだと再確認させられるというか。いずれにしても20代の夢枕貘が書いてきた作品たちを改めて読み返してみると、若い頃からすげえなあ、ってのと昔からこうだったんだなあ、ってのがごちゃ混ぜになって、面白い。

全体に読み応え重めの作品が並び、その読後感を最後の愉快なタイポグラフィクションが軽く中和してくれる作品集。よく考えてみればバカSFに分類されてもおかしくないのだが、山好きが山の話を書くと、どういう訳だかお話が感動的になってしまう、という法則を地でいくような「山を生んだ男」がかなり良い。

★★★☆

[Books] オタクはすでに死んでいる (25:20)

オタクはすでに死んでいる(岡田斗司夫/著) 岡田斗司夫 著
新潮新書
ISBN978-4-10-610258-5 \680(税別)

中の人などいない

2006年、ロフトプラスワンで行われたトークショーをベースに、「オタク」と「昭和」のメンタリティがすでに死滅しているのに、そのことに気づかない、または気づこうとせずに旧来の価値観で物ごとを問題視して、何ら有効な解を出せないでいる現状にチクリと一針、刺してみるような本。

基本的にノーマルポジションの人向けに書かれた本であって、いわゆる「オタク」の側にいると自覚できている人、特にオレみたいに著者が「第一世代」に分類しているオタク的には、「まあそうだよね」的な感想しか持てなかったりはする。まあこの、「まあそうね」的鷹揚さもまた、第一世代オタクの特徴である、と著者に指摘されると「それもそうだよなあ」などとも思ってしまうわけだが。

全体的には彼の「オタク学入門」などでも少し触れていた、第一〜第三世代のオタクの分類とその特徴説明、現在の「オタク」の主流である「第三世代オタク」が、オールドタイプ(第一、第二世代オタクを便宜上こうまとめちゃいますね)のオタクたちと決定的に違う点を指摘し、彼らの特質が、実は今の日本の閉塞状況を生み出したものと根っこは同じなのだ、という話に持って行く。

周りを気にしない、あるいは周りに向って積極的にアクションを起こすのがオールドタイプ・オタクの特徴だったとしたら、現在の多数派であるところの第三世代オタクの特徴的な部分というのは、自分のアイデンティティを常に気にし、自らがここに行くと決めた方向性と、それ以外の他者を常に差別化して考えるところにあり、その状況を端的にあらわしているのが「萌え」というワードである、と言うあたりの分析はかなり興味深い。外国の子どもたちと日本の子どもたちの決定的な違いとして「小遣い」の存在を指摘し、これが故に日本では、「子供じみた大人」と「大人びた子ども」が溢れかえることになってしまった、ってあたりの指摘も面白いし、「オタク学入門」でざっと分類しただけだった、第一〜第三世代オタクについて、さらにつっこんで「貴族階級」、「エリート階級」、「センシティブな層」と定義づけたあたりも、読み手にとっては分かりやすい喩えだと思う。

ただ、ね…

「オタク」と言うワード自体が、オタクがオタク自身を規定するために作った言葉ではないわけだし、そもそも「オタク」で規定されるキャラクターの定義自体がはっきりしていたこともない。全ては誰か、「オタク」の世界から一歩距離を置いたところにいる人物によって用意されたものであるわけだし、規定する、と言う行為自体が規定のためではなく、ぶっちゃけてしまえば「商売」のためのツールとしての命名であったはずで、少なくとも「オタク」と呼ばれてきたオタクたちは誰一人、今日からオレのことはオタクと呼んでくれ、なんて言ったわけでもなく、全ては誰か、他者の思惑で生まれ、育ってきたのが「オタク」というワードでありその名で括られるエクメーネであったわけで、その存在を最大限に利用して来たのは他でもない、「トップをねらえ!」でオタク市場の可能性を世間に知らしめ、「エヴァンゲリオン」で(著者が定義するエリート階級であるところのオタク第二世代を熱狂させることで)オタクの世界に埋蔵されている、バカにならない熱量の掘り出し方を多くの(商売)人に教えてくれた、ゼネラルプロダクツ - ガイナックスの制作集団ラインではなかっただろうか。

「オタクはすでに死んでいる」、うん、そう思う。でも「オタク」(括弧付きのオタク)を殺した(というか、死期を早めた)のは岡田さん、あんたたちだよ、って気持ちも完全には拭えないのだよなあ。

オタク学入門(岡田斗司夫/著)

文庫になってるんですね。オタクという生き方の解説書としてはかなり良質。

★★☆

本日のツッコミ(全6件) [ツッコミを入れる]
ロドリゲス翁 (2008-05-03 22:55)

つっこみではないんですけど、ふと思ったんですが、この人って<br>ゼネプロ初期で標榜してた選民意識から結局かわらんないってことなんでしょうか。(「俺は2001年のディスカバリ−の完全再現モデルを指向する位のSFマニアなので、1/1ラムちゃんがあればそれで満足しちゃうアニメファンとは別格。」ってやつ)<br>なんかつまる所そういう話のような気がしたり。<br>あと、個人的には「ヲタク」以前のもっと積極的で能動的な「マニア趣味」(たとえば電子工作系、はたまたオーディオ、転じてBCLとか、それこそ鉄道模型とかそういうの)っていうのは地続きで時代的な連続性があると思うのですが、そのへんにあまり言及しないのは論そのものが己の優位性ありきっていうことなんですかね?(と聞いてもしょうがないんですが。)どうも散漫ですいません。

rover (2008-05-04 00:02)

「第一世代オタク」=「貴族階級」って部分に関しては、ノヴリス・オヴリジェ的お話と、貴族故の鼻持ちならなさも併せて書いてはおりましたが、それを差し引いてもおっしゃるとおり、と言うかまさにその、鼻持ちならなさをしばしば感じざるを得ない本にはなっていたと思います。<br>それまで「マニア」であった層を「オタク」で括って、それって実はすげえんだぜ、って流れを作ったことには一定の評価をしますけど、そういうまとめ方ができるオレってすげえ(だろ?)的なニュアンスが顔を出してしまってるのは否定できないところですよね。

ロドリゲス翁 (2008-05-04 12:09)

>そういうまとめ方ができるオレってすげえ<br><br>70年代末にOUTの投稿者として登場した時の<br>有り様(絵を描く訳でもなく、なにかを創造するでもなく<br>小理屈こねて他者に先んじようとする感じ)<br>そのままのような…。<br><br>、あっ、別にこの人嫌いじゃないんですよ。多分、私が<br>貴族になりそこないの41才なので引っ掛かるんです。

水上紫煙 (2008-05-08 02:14)

以前、テレビのインタヴューで岡田氏は、<br>「オタクが世の中に知られ始めた頃、世間的には『何か変なもの出てきたぞ!』みたいな感じで警戒心いっぱいだったんですよ。しかもオタクの中にそういった世間の人たちと普通に対話出来る人がいなかったんですね。で、たまたま僕は普通の人とコミュニケーション出来る能力を持っていたのでオタクを代表してこうやってメッセージを出しているわけです。」<br>みたいなことを言っていました。<br>個人的には感じるのは、岡田氏はインフォメーション&アナライズ能力に長けているので、代弁者として市場を誘導していくことが過去において出来ましたが、現在、これだけインターネットが広く普及し、作り手側も受け手側も自由に情報を発信できる世の中になって、オタクの人にとってもそうでない人にとってもあまり必要の無い存在になりつつある様に思います。<br>そうなると、実際に描いたり造ったりして自ら情報を発信することが出来ない岡田氏は、「オタクは死んだ」と言って自己のアイデンティティを保つしかないのではないでしょうか。<br>そして生き延びるために新たな市場を求めてダイエットし、『オタク系文化人』からただの『文化人』へ脱皮を図ろうとしているように思えます。<br>(ただのっけから『いいめもダイエット問題』でつまずいてしまい、空気が読めてないことを露呈してしまいましたが。)

rover (2008-05-10 00:25)

>ロドリゲス翁さん<br>大統領選かなんかに立候補してたんでしたっけかね(w。<br>>水上さん<br>かつて阪急ファイブにあったスターログショップも早々にしょぼんじゃったあの時代、ほとんど駄菓子屋レベルの規模であったとはいえゼネプロを立ち上げた手腕(というか怖いもの知らずのプロデューサー感覚)ってのは、やはりそれなりにただ者ではなかったのでしょうね。<br>岡田氏と同じ世代の自分としては、明確な線引きすら出来るように思えないいろんな物好きたちを、とりあえず「オタク」とカテゴライズしちゃって、その層に向けてキャッチーなコピーをまき散らし、そこに商機を産み出す事に成功したことについては、反感とやっかみを大量に含みつつも、やはりオトナの戦略ってところで評価しないわけにはいかないよなあ、とは思いますね。で、オトナとしてはそろそろ、このフィールドからは(岡田斗司夫は)撤退した方が得策だ、と判断したのならそれもありなのだろうな、とは思います。<br>ただ彼は、この先も完全には、彼が定義した&quot;オタク&quot;から離れて活躍する事も出来ないのではないか、とも思いますが。

ロドリゲス翁 (2008-05-12 02:07)

調べてみたらOUT国の近畿1区総選挙でした。<br>立候補の記事が79年5月、落選発表が8月。


Google search
www.bumbunker.com
Web
2008年
5月
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

ここ1週間分の話題

傑作です

懐かしさ満点

妖精を観るには…

ジュヴナイルとしてなかなか良質

バナーが必要ならこちらを
バナー素材

古本屋やってます
特殊古本屋 軽石庵

2003年9月までのサイト

巡回先
ROVER's HATENA

あすなひろし追悼サイト
あすなひろし追悼サイト

twitter / karuishian
«前の日記(2008-05-01) 最新 次の日記(2008-05-03)» 編集
©1996-2020 乱土 労馬:l-rover@kobe.email.ne.jp