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佐々木守 著
大和書房
ISBN4-479-48011-0 \1200(絶版)
「ウルトラマン」、「ウルトラセブン」、「怪奇大作戦」などで数々の傑作を発表してきた佐々木守の脚本集。未制作の劇場用ウルトラマン「怪獣聖書」、巻末に実相寺昭雄、池田憲章との対談を収録。
商売ものに手をつけるシリーズ、今回は佐々木守さん特集。そこはかとなく「怨」の漂う上原脚本、ストレートな中にも疑義を申し立ててくる金城脚本と来て、今回の佐々木脚本の特徴はどうかと言えば、一言で言って「技」と言うことになるのではないかな。まずはその技巧が光る脚本群。子ども番組であることを踏まえた、シンプルな中にも起伏をつけたストーリー展開に、極めて印象的なナレーションで締める、そのラストは記憶に残る。「真珠貝防衛指令」の(真珠が)科特隊員の給料でも買えるようになったのだ、というヤツ、「空の贈りもの」の「だって春なんだもん」、ともに脚本を読んでいくだけで、そのシーンが鮮やかに甦る。
とはいえ脚本自体の個性は実はそれほどとんがっているわけではなく、お話の流れはむしろオーソドックス。それでも佐々木作品がしばしばユニークなものとして語られるのは、コンビを組むのが実相寺昭雄監督であると言うことが大きいのだろうと思う。実際、「空の贈りもの」だって、脚本読んだだけではテレビで見た時ほどには爆笑できない流れになっているわけだし。このあたりは脚本家と監督の間の信頼関係と、コラボレーションの妙が産み出したものであったと言うことなのだろう。そのあたりは巻末の対談で詳しい。作り手側(というか主に実相寺監督)の意向がうまく伝わらない/否定されたこともしばしばあるようで、そこはカントク、少々不満に思っておられるようですが、見ていた小児にとっては、監督の意向が否定されていた部分こそがガキんちょの琴線をじゃらんじゃらんとかき鳴らすことも多かったなあと、今となっては懐かしく回想されたりもする(ガマクジラのデザインとか、シーボーズのやけに人間くさい所作とか)。あ、話が逸れた。
ただし、本書にも収録されている未制作の「怪獣聖書」を見れば分かるとおり、佐々木守という人は単純な職人脚本家というわけではなく、その内面には強烈な思想性もまた含まれている訳で、それはATGと円谷の共同製作が予定されていたと言う本作品を読めば鮮烈な印象になって帰ってくる。問題作上等なATGのスタンスを割り引いても、ここに横溢する思想性、と言うかぶっちゃけ、サヨク的な匂いというのはかなり強烈。批判するだけしておいて、批判対象に対する有効な解を最後まで提示し切れていないあたりまで含めて、実にこう、(カタカナで書く)サヨク風味たっぷりで、工場労働者の倅にしてデフォルトで左翼的思考が身に付いているオレが読んでも、少々鼻白んでしまうほどのものだ。特撮パートを最小限に抑え、ATG主導でこの映画を造ったらそれなりにユニークな映画ができたのかも知れないような気もするが、同時に「ウルトラマン」大好きな自分としては、この「ウルトラマン」は自分が見たい「ウルトラマン」ではないなあとも思えて少々微妙。怖いもの見たさ的興味も無くはないが、これはある意味葬られて正解、なのかも知れないとは思った。ついでに言うなら、こいつをベースに作られた「ウルトラQ ザ・ムービー」が腑抜けなのも、まあ仕方がないところではあったと言うところだろうか。さらについでに言っておくと、いろんな意味で佐々木守の脚本の魅力は、「ウルトラセブン」の作品世界では十全に発揮されないのだな、とも感じた。
ともあれ内に秘めた思想性をあからさまに前に出すことなく、高い技巧で編まれた脚本群の読み応えは充分。「怪奇大作戦」をしっかりと鑑賞するには少々発育が足りない年頃だった自分が、今になってもったいないことをしたと思ってしまうわ。
ということで「ウルトラ」にまつわる脚本家さん、最後にもうお一人さん残ってますです(w。
★★★★
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