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2009-05-14 [長年日記]

[Books] レインボーズ・エンド

レインボーズ・エンド 上(Vinge,Vernor/著 赤尾秀子/翻訳 ヴィンジヴァーナー/著)レインボーズ・エンド 下(Vinge,Vernor/著 赤尾秀子/翻訳 ヴィンジヴァーナー/著) ヴァーナー・ヴィンジ 著/赤尾秀子 訳
カバーイラスト 瀬戸羽方
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
創元SF文庫
ISBN978-4-488-70505-3 \940(税別)
ISBN978-4-488-70506-0 \940(税別)

世界的な大詩人、ロバート・グーは今、重度のアルツハイマーにさいなまれながら、そう遠くない死の時を待っていた。そんな彼に突然もたらされたのは、まったく新しい治療法だった。記憶力や知性に加え、肉体的な外見までも若返ることに成功したロバートだったが、急激な自身と環境の変化に戸惑うことも多い日々。すでに暮らしに浸透したユビキタス・コンピューティング環境と自らの詩作の勘を取り戻す目的で同じような境遇の老人たちも通う、ハイスクールの成人教育コースに通い始める。ロバートが勝手の分らぬ世界に飛び込んだ時と同じ頃、世界の別の場所ではまったく新しく、そして場合によっては世界の有り様を一変させるかも知れない陰謀の一端が姿を現しつつあった…。

現在の我々が享受しているIT環境がさらに進化した世界、ICBMに変わる脅威として存在する(かも知れない)YGBMなるアイテムの存在、みたいなヒキがかなり魅力的で、そこらの世界説明メインになる上巻はかなり楽しく読んでいけた、んだけどね…。話が動き始める上巻の終盤から下巻に進んでいく展開がかなりこう、少々グダグダな感じがあった上に、ちょうどデジカメ落っことしたりして少々凹んだ状態で一番のヤマ場になるであろう部分を読んで行ってたもんだから、肝心なところがまったく頭に入ってこなくて、こりゃちょっと困ったな、ってなっちゃって、なかなか続きを読む気が起きなかったんだけれど、放ったらかしじゃいかんだろ、ってんで続きを読んでみたんですが…

自分の精神状態に改善があった(デジカメ帰ってきたからね)せいもあるのかも知れないが、終盤の読み味は結構いい感じで、ヤマ場で感じたグダグダ感っていったい何だったろう、こりゃもう一度、下巻だけでも読み直した方が良いのかもしれない、なんて思ってしまった。

今現在の我々が使っているものからさほどかけ離れたものにはなっていないテクニカルタームとか、ユビキタスとネットワーク環境の世界の、進んでいるけど斬新とは言えない世界感と、その上に被さる感じにある世界情勢や、YGBMなる作品世界的切り札のスケール感の大きさから来るバランスの悪さはあるんだが、こいつはたとえばギブスンの電脳世界的な、どこか突き放された感じを残しつつもその存在自体がクールな、新しくて別な世界のお話ではなく、基本的にアリモノのテクノロジーが正常進化した世界で暮らす人間たちの、世代や経験から来る「今」との違和感に対して、それぞれが折り合いの付け方を模索していく姿を追いかけていくようなお話である、と言うような見方で読んでいくと、これはこれでなかなか味わい深い、と言える。思いきり乱暴に言い切っちゃうならこの作品、

図書館コイル

なのだよね。実は相当大がかりな話が進んでいるんだけれど、そこの所は割と放ったらかし気味に、偏屈爺さんのアイデンティティ再獲得の方の描写に重きが置かれてるあたり、案外有川浩っぽい部分があったりするかも、なんて思ったりもした。エッジなところで突っ走るSF、ってあたりを期待するといろいろがっかりしちゃうけど、先端技術に翻弄されるオールドタイプが、「今」と折り合いをつけていくストーリー、と捉えるとこれはこれで、いろいろしみじみと来るところのある作品と言えるのかも知れない。

いろいろヒキを残しているように思えるんで、続き書いて下さい、ヴィンジさん。

★★★☆


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