ばむばんか惰隠洞

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2009-05-28 [長年日記]

[Books] スパイダー・スター

97841501171089784150117115 マイク・ブラザートン 著/中原尚哉 訳
カバーイラスト 鈴木康士
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4ー15ー011710ー8 \780(税別)
ISBN978-4ー15ー011711ー5 \780(税別)

双子座のβ星ポルックスを主星とする惑星アルゴ。人類が植民して約200年の歳月が経っているこの星には、およそ200万年前にすでに現在の地球人類の科学技術をはるかに凌ぐ文明を築き上げた異星人たちの遺跡が数多く残されていた。惑星の名前を取ってアルゴノート族と名付けられた彼らは、200万年前のあるタイミングで突如消滅してしまう。その理由はまったく不明だった。だが、いまだに残る多くの遺跡の内のひとつに人類が踏み込んだとき、200万年以上にわたって眠っていた何かが目をさましたのだった…。

帯に曰く、現役天文学者が描く迫真の宇宙SFだそうで、なんだか小難しい理屈をたたみかけられるのかな、などとちょっと心配したんだけれどそこは杞憂で一安心。もちろんハードSF的素養は充分あるんだが、それはあくまで下敷きで、お話自体は手堅くまとまった地球外世界における冒険物語になっていて、そこはしっかり楽しめる。比較的ライトにまとめられた「リングワールド」みたいな感じのお話、と言えるだろうか。

ハードSFとしてのキモのひとつは、赤色巨星を主星とする太陽系において、人類に近い生命体が生物が生存できる環境を維持できる軌道を取る惑星、をどうやって実現させるか、ってあたりだろうか。良くハードSFで出てくるネタにフライバイがあるけど、これをちょっと見方を変えて実行してみる、ような手法で時間をかけて惑星の軌道を変えていく、と言うアイデアは、確かに現役の天文学者ならではのものなのかも知れない。さすがにひとつの惑星の公転軌道を変える、ってプロジェクト、それなりに時間もかかるものであるわけで、この辺でやはり天文学なんて学問に携わる人ってのは、気が長くないとつとまらないのかな、なんて思ったり。あと、その反面で本書、やたらに登場人物が尿意を催す描写が目立ち、時として我慢できずにお漏らししちゃったりすることも多いのが少々気になったぞ。天文学ってのは常に尿意との戦いな学問だったりするんだろうか(それはないだろ)。

お話そのものは先にも書いたとおり実に手堅くまとまっていてそれなりに楽しめる。天文学を修めるかたわら、有名なクラリオン・ワークショップに通って小説の書き方を学んだ人だそうで、本書は彼のキャリアにおける第二作。良くも悪くも学んだことをしっかり守ってます的な作品と言える。それなりに楽しめるが、こっちのハートをがっつり鷲掴みにしてくれる何かがあると言うほどのものでもなく、って感じですか。天文学者としての引き出しをもっとぶちまけてくれたら、もしかしたらすごく面白いお話を読ませてもらえるのかも知れないね。

それはともかくこの作品、一点どうにも気になるところがあって、ネタバレにならずに言うのが難しいんだけど、お話の冒頭から前提になっていた200万年というタイムスケールのオーダーが、あるポイントで突然数百年オーダーにすり替わってしまっているとしか思えないのだよな。で、この数百年、が結構大きな意味を持ったりするから話はちょっとややこしい。オレは頭のいい読者じゃないので、もしかしたらどこかで重要なポイントを読み飛ばしちゃっているのかも知れないんだけど、もしそうじゃなかったらこれ、作者が自分で考えた設定を途中でど忘れしちゃったって事になるような気もするんだよな。これはこれで辻褄は合ってるんですかね? 辻褄が合ってるとしたら、どういう説明でそういうことになるんでしょ? 教えてSFの偉い人。

★★★☆


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