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ジュリアン・ストックウィン 著/大森洋子 訳
カバーイラスト Geoff Hunt
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫NV
ISBN978-4-15-041185-5 \980(税別)
アブキール海戦とそれに続くアクレ包囲戦において、ナポレオンの破竹の進撃にも一旦歯止めがかけられた。重要なこの二つの戦いに参加し、与えられた場所で目覚ましい活躍を残したトマス・キッド。乗り組んだテネイシャス号でも順調に地位を上げていく彼だったが、それもつかの間のことだった、新たな艦長としてテネイシャス号に着任してきたのは、かつてのアルテミス号の航海でキッドにその無能ぶりをさらけ出したロウリー艦長だったのだ。言いがかりにも近い形で彼から叱責と艦隊本部への報告がなされたことで、キッドの将来は完全に閉ざされてしまったかに見えたのだが…
捨てる神あれば拾う神もある、ってことで若いながらも将来有望な士官に対し、無碍にその未来を閉ざすこともあるまいと考えたお偉いさんの手回しで、マルタに赴いたキッドには小さいながらも新造のスループ艦が与えられ、落ち込んでいたキッドも俄然やる気を取り戻すんだが、新造艦にかき集めの乗組員、単身マルタに赴いたが故に心を許せるただ一人の友であるレンジとも引き離された環境で、新米艦長がどう頑張っていくか、ってお話。ホーンブロワーやボライソーが一種のサラブレッドで、こうした重責についてもある程度、前もって覚悟というか認識が出来ているのに対し、元が街のカツラ職人で、そこから叩き上げでここまで昇ってきたキッドにとっては、直面する全てのことが初めての体験。一隻の船をちゃんと動くようにするまでに、いったいどんな苦労があるのか、なんてところを細かく描写した話は、これまで案外無かったかもしれないわけで、そこの所は新鮮味があって興味深い。ついでに、どんなにデキる奴であっても、新たなポストに新たな失敗はつきもの、ってあたりの描写にも抜かりはない。
お話はそんな躓きつつもテンション高く頑張る新米艦長のお話が前半、後半はつかの間の和平(アミアンの和約のあたりっすかね)によって、一時的に昇進の機会を失ってしまい、将来設計に苦労するキッドと、親友であるレンジの、彼なりの苦労話がメインになる。いわゆる帆船モノの海洋冒険小説としては、お定まりのフォーマットを微妙に外してしまっているところがあってそこはちょっぴり残念だった(定番ってのは案外大事だと思うんだ)けど、このシリーズで過去に登場したキャラクタとの再会やら、この時期に発見された新大陸オーストラリアにまつわる史実の上手い具合の絡め方なんかも手際よく、なかなか結構。
キッドとレンジ、二人の関係性にもあらためての見直しがあったりしてまあまあ楽しめた。ラストの盛り上がりにはもうひと声、欲しかったんだけどね。あと、今回はジェフ・ハントのカバーイラストが素晴らしく良い。この手のイラストを描く人って、彼以外だとクリス・メイジャー(とても好きです)ぐらいしか知らないんだけど、本書のカバーイラストの、何より空の色が大変印象的で、こういうジャンルで、こういう色合いのイラストは初めて見たなあ、と言う感じです。
序盤の問題人物、ロウリーくんが登場するのはこちらのお話。マイ感想はこちら。
★★★
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