ばむばんか惰隠洞

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2004-11-05 [長年日記]

[web] ある「トンデモ」とのニアミス (23:01)

2年ほど前、webでときどきメールのやりとりなどしているお友達(仮に某氏、としとく)からとあるライターさんをご紹介いただいた。なんでも科学からSF、特撮ネタなどまでも網羅した、オモシロ、かつニッチで売れるかもわからんアイデア商品提案本、みたいな本を企画してて、少しそっち(特撮とか、SFとか)方面かじってる私に、スタッフになってやってくれないか、と言う事だったわけである。あ、オレもとうとうライターデビュー? とか思ってちょっとワクワクしたんですけどね。

で、しばらくしてそのご本人からご挨拶のメールをいただき、その後も何度かやりとりもしたんだが、どうもおかしい。例えばいきなり、「よく時代劇でキセルで刺客の一撃を受けとめるシーンがありますが、私の知識ではキセルは喫煙の道具であると同時に、十手としての役目を持っていたと思うんです。仕込み杖と同じようなモンですよねー。この十手について、なにかご存知じゃないですか?」なんてことを聞いてくる。知らんがな。つか、いったいどこからそんな話を聞いてきたんだあんたは

某氏ともメールでやりとりしてたんだけど、件のライター氏、某氏とつきあい始めた頃はもっとまともだったけど、なんだか最近はヤケに自分マンセーなデムパ人間に変質しつつあるようで、紹介しといてなんだけど、つきあわない方がいいかもしれない、なんてアドバイスももらうようになっていた。

そうこうするうち、最初の企画はどうも流れそうな按配となり、「電脳系」から「空想系」に重きを置いた様な本に方針変更する、今某社に売り込みかけてる、脅し半分で売り込んでるから、たぶん99%大丈夫などというメールをもらった後、ぷっつりとこっちには連絡が来なくなったのでした。

さてそれから二年たった今年の夏、一冊の本が出版されました。七瀬隆 著、「トンデモサイエンス読本」。

………彼だぁ(^^;)。氏のサイトはこちら。http://www1.ttcn.ne.jp/~officetimo/とにかく掲示板あたり読んでみてください。もうあれです、くらくらします。案の定あちこちで叩かれてるみたいで、山本弘氏もご自分のところの掲示板に七瀬氏専用スレッドを立ててるようですな。ついでに、七瀬氏の掲示板でちょっと話題になってたでんごんでんでんもあわせてお読みになると香ばしさも増すであろう。2ちゃんでも人気者らしい。

いやもうホントに凄いのよ。オレ、肝心の七瀬氏の本をまだ読んでないんだけど、零戦は木製だったとか機銃同調装置なんて出来るわけ無い、なんて堂々と言える人、初めて見た(ついでに、七瀬氏も、それにツッコミ入れてる皆さんもなぜかここに触れてないんだけど、機銃同調装置というのは、プロペラが機銃を横切る寸前に引き金を止める、のではなく、プロペラブレードが機首の二丁の機銃の間に入ったときに引き金を止める仕掛けではなかったか? いやもうどうでもいいけど)。写真に写った地球と月の写真のサイズを直接定規で測ってその質量比を論じる人を初めて見た。どんなに突っ込まれても、一向に動じないその心の強さには感動すらおぼえる。

まあそれよりなにより私が戦慄したのは、もしかしたらこの本の奥付に、「執筆協力者」として私の名前が載ってたかも知れないという事だったりするわけだが(^^;)。

いやちょっとこの方の凄さは筆舌に尽くしがたいです。是非秋の夜長、氏のサイト、氏にツッコミ入れてるサイトを巡って腹抱えてくださいませ。

しかしこんな本でも名前が載ったら、オレとしてはそれはそれで良かったかも知れんなあ、とちょっとだけオモタ(んな訳あるかい、と某氏に叱られますたよ)。

[Chinema] おづおづと二本立て (11/6 00:29)

恥ずかしながら私、45年生きてて小津と名の付いた映像作品って伊丹で見た「小津安二郎版ゴジラ」しか無かった(よりによってそれかい)んですよ。で、いろいろと話には聞いているので一度は見てみたいなあと思ってたんですが、湊川のパルシネマしんこうえんで、小津の二本立てやってるらしいってんで、神戸古書会館の古書即売会を覗いた後、湊川までてくてく歩いて観に行ってきました。「小津安二郎の芸術」二本立て。

お題は「彼岸花」(1958)と「秋日和」(1960)。共に原作は里見の雑誌掲載小説。

で、おどろいたねえ。118分に125分と長めの尺の中でやってる事といえば、年頃の娘の結婚話にやきもきする親の話。これだけ。なのに飽きない。そんなに芝居が上手いとも思えない佐分利信や笠智衆がぼそぼそと喋るあたりで最初は不安になるんだけど、いつかそれが慣れてしまう。慣れるとそこに妙なおかしさが漂ってくる。そして見終わってみると、妙にホッとしたような、なんだかさみしいような気分に浸っている自分がいる。不思議だ。

「彼岸花」は、笠智衆、中村伸朗(『ドゴラ』の宗像博士ですよー)ら中学時代の同窓生の娘たちも次々と結婚し、そろそろうちの娘も、と気を揉む佐分利信。なかなか本心を明かさない娘の有馬稲子だが、それはそれとして妻の田中絹代(すばらしくチャーミング!! )、下の娘の桑野みゆきと4人、穏やかに毎日を過ごしている。同窓生の一人、笠智衆の娘、久賀美子が家を出てスナックで働いているらしい、と言うちょっとした心配事もあるにはあったが、まああとは娘に、自分がこれと見込んだ男と結婚してもらえば、と思ってた矢先に、娘と結婚したいという青年が突然佐分利の元を訪れたからさあ大変、と言うようなお話。

「秋日和」の方はと言うと、佐分利信、中村伸朗、北竜二が久々に集まり、親友だった三輪の7回忌に顔を出す。三輪の未亡人、原節子と娘の司葉子は共に美しい。佐分利たちは司にいい縁談を持ってこようと骨を折るが、自分が結婚すれば原が一人になってしまうことを気にする司はなかなか結婚話には乗り気にならない。ならばと今度は、まず原の方を再婚させてしまえと策を練るのだが、その話が変な風に伝わって、原と司の間に変な誤解が生じてさあ大変、てなお話。

もうあれですよ、どっちも佐分利信と中村伸朗が、若い女に「まだ結婚しないのか、早く結婚しろー、しろー、しろー」とうるさくつきまとったばっかりに、話がややこしくなっちゃう、ってお話なんですな。ちなみにどっちの映画でも、ヒロインの婿さんになるのは中井貴一のおとっつぁん、佐田啓二。これがまたダイコン(^^;)。そんなに結婚結婚言うなよ、とも思うけど、昭和30年代ってのは、まだそういう時代だったんだろうな。

これが小津ワールドというものなのか、両作品には筋立ての似通った部分以外にも、ディティルでかなり共用パーツ(^^;)があったりして妙に面白い。佐分利たちが飲みに行く料亭は同じ名前で女将も同じ(高橋とよ)だし、「彼岸花」で笠智衆の娘が働いてたスナック「ルナ」は「秋日和」にも登場する、という具合。なんだろう、例えば東宝特撮では沢村いき雄はタクシーの運転手であり、池谷三郎はアナウンサー、みたいな暗黙の了解(^^;)があるワケなんだけど、そういうのが小津ワールドにもあったりするのかしら。

小津ワールドと言えばあれです、伝説のローアングルからの映像も堪能致しました。特に「彼岸花」の方は低いね。あと、徹底的にフィックスで撮ってるカメラも印象的。「彼岸花」は彼の初のカラー作品という事もあってか、色彩設計が大変にすばらしい。全体に落ち着いた色調で統一してるんだけど、その中に一カ所だけ、鮮やかな赤いもの(ヤカンだったり、ラジオだったり、消化器だったり)を必ず配置してみせるあたりのうまさに唸る。「秋日和」の方も上手い。ヒロイン、司葉子は比較的地味なカラーコーディネイト、その親友で気っぷのいい下町娘を演じて大変に印象深い岡田茉莉子の方は逆に、大変に鮮やかな色彩に身をまとい、そのキャラクターも実にキュートで、行動的。ここらもうまいなあ。

お話は前にも書いたとおり、まことに他愛もないものなんだけど、随所で見せる細かいコメディ、なんだかんだ言ってもそこは大スターたち、時折見せる怖いほどの表情の変化、そして、あたりまえな事をあたりまえに、淡々と綴っていく作家の目に、本当に飽きることなく、他愛もない、ささやかな家庭争議ドラマを堪能し、なんだかちょっと切ないような気分で小屋を出た事でした。

私の一番のお気に入りのシーンは、「彼岸花」のラスト近く。ようやく有馬稲子も無事に新生活を送る事になり、ホッとした田中絹代が自宅の籐椅子に腰掛けるシーン。この籐椅子、しばしば登場するのだけれど常にだれも座らない。それが最後の最後で、大きな荷物をひとつ下ろしてホッとした表情でここに田中が腰を下ろす。私ここでほろりと来てしまいました。

いかん、猛烈に長くなっとる(^^;)。まとめよう。

ホントに他愛もない話なんだけど、それを丹念に描くだけで、映画とはこんなにも愛おしいものになるのかね。内外で小津が改めて評価されてるって理由がちょっとだけわかったよ。私も今、にわか小津ファン状態。来月も二本立て(『麦秋』と『秋刀魚の味』)、あるそうなのでまた観に行かなくては。

あ、最後になりましたが、見に来てたお客さん、「デビルマン」より人数多かったです(w。

[Chinema] どうでもいい追加事項 (11/6 00:44)

上の項で書ききれなかった、というか、どう挿入したらいいかわからんかった小ネタ。「彼岸花」には一ノ谷博士こと江川宇礼雄が、佐分利らの同窓生として登場してます。男前。高橋とよは、来月上映予定の「秋刀魚の味」でも、やっぱり料亭「若松」の女将なんですなあ。両作品とも、桑野みゆきは佐分利信の娘。あと岩下志麻姐さん、「秋日和」では佐分利信の会社の受付嬢をやってはります。これが銀幕デビュー、かな。

以上。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
すみ (2004-11-06 03:08)

「また娘が嫁入りする話である」ってやつですな(c)唐沢俊一日記

rover (2004-11-06 13:31)

そういうこってす。ちなみに来月の2本も、また娘がikr…


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