ばむばんか惰隠洞

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2004-11-17 [長年日記]

[Day] カミさんダウン (22:03)

ふっふっふ、レディースデイでるんるんで映画見にいって、街で風邪もらって帰って来てやんの。んでもこういうときに限ってのんびりやればいいやと思ってた仕事が一日前倒しになったり、訳の判らんリフォーム業者の訪問があったりしてドタバタしまくるのであった。はふう。

[Books] 日露戦争を演出した男 モリソン (11/18 00:15)

本書カバー ウッドハウス暎子 著
カバー写真提供 Alastair Morrison
カバーデザイン 新潮社装幀室
新潮文庫
ISBN4-10-120731-3 \552(税別)
ISBN4-10-120732-1 \552(税別)

百年経った今の日本外交がちょっとばかり心配になる本

風雲急の19世紀末から20世紀初頭のアジア。ロンドン・タイムズ特派員、G・E・モリソンはこの時期北京にいた。オーストラリア人である彼にとって、最重要の課題は祖国の安全。そのためには英連邦の安全が必須。だが北清事変以降の中国は清朝から得られる利権を巡り英国、ロシア、そして新興国家日本が水面下で激しいつばぜり合いを繰り返している。ボーア戦争で疲弊している英国には、今中国大陸でロシアが既得権益のために行動を起こせば、それを押しとどめるだけの余力は残っていない。ならばと考えたモリソンは、積極的にロシア・清朝間の密約をすっぱ抜き、ロシアの中国への野望を明らかにしようと奔走する。その目的は、同じくロシアの極東進出によって、自らの植民地政策に大きな齟齬をきたす事になる日本に、対ロシア開戦の動きを加速させる事。バイタリティーに溢れ、培った人脈も豊富なモリソンによって、日本、そして世界の世論は大きく動いていく…

日露戦争の「陰の仕掛け人」と言われた一人のジャーナリストの動きを中心に、20世紀初頭の各国の外交戦略、そこに飛び込んだ若い新興国日本の苦闘を織り交ぜて描かれる日露戦争。日清戦争から三国干渉の屈辱を経て、一等国にのし上がろうとする近代日本がが初めて経験する本格的な外交戦、その陰で日本にとって多大な恩恵を与えた一人のオーストラリア人ジャーナリストの物語。

不偏不党、完全に中立こそがジャーナリストの立ち位置、なんてのがお題目でしかない事は判りきった事なわけで、人がなにかを書くって事には、多かれ少なかれ、その個人の意志が入り込むものだろうと思う。モリソンにとって最重要なテーマとは自国の安全。それは国益と言い換えてもいい。それを突き詰めて考えていくと、20世紀初頭の世界において、祖国オーストラリアの安全は盟主国である英国の安定以外になく、それに対する最重要の脅威が東進を画策するロシアであり、盟主国に適切な対応が取れない事情があったとき、代りになる手段があるとすれば、それは同じく国益を損なわれようとしている日本に、英国の代りにロシアと戦ってもらう事しかない、という大変に明晰な理屈から、モリソンはロシアの動きを追跡し、その情報を自らの新聞で、また、直接日本の政治家、軍人に流していく。ここには厳正中立、なんてお題目は存在しない。モリソンは日本に戦争して欲しいのだし、それは最終的にはオーストラリアの国益にかなう事だからそうしているわけで。

などと書くとなにやら策謀家に見えてきてしまうこの男なんだが、そういう面も確かにあるんだが、北清事変の折(映画『北京の55日』の世界ですな)には日本の軍人たちと行動を共にして、彼らの人品にいたく感銘を受け、自らも日本贔屓になっているあたりで、この人間を単なる策謀家、とも決めつけにくくなってしまっているあたりが人間の面白いところだろうか。一面では冷徹なマキャベリストの雰囲気を持ちながら、もう一方で、そのマキャベリズムの力学が向けられる先の国、国民に感情移入してしまうあたり、ついでにエネルギッシュなジャーナリストである一方で、わりかし女運には恵まれていないように見えるあたりも併せて、憎めない人間だな、とも思ってしまう。彼の活躍のおかげで、膨大な数の日本の若者たちが死んでしまう事になるのだけれども。

さらにいうなら、確かにモリソンは「陰の仕掛け人」であるかも知れないけれど、表舞台の、百戦錬磨の諸外国の外交官、さらにはその指導者たちの外交感覚の切れ味は、モリソンの頑張りのそのまた上を行っているのかも知れない。んで、帝国主義の最後の時代に参入してきた若い国家たちの意識と体力の差が、その後、20世紀を過ぎて今に至るまでいろんなところに現れているような気がする。ここで言う若い国家とは、日本、アメリカ、ドイツ。古株である英国は、幾度も亡国の危機に陥り、また、一時的に国際間での発言力を大きく落としてしまうけれども、決して完全には没落しない。フランスも(かなりボロボロではあるけど)同様。だけど若い国家は、些細な瑕疵で壊滅的な打撃を受けてしまう。カイザーの外交感覚の欠如でこてんぱんに潰され、その後念の入った事にもう一度、新しい帝王をいただいてまたこてんぱんにされたドイツ、日露戦争の成功のおかげで、それまでの念入りな外交感覚を忘れ、同じくこてんぱんな目に会う日本。結構マズい手を打ってるんだが、有り余る体力のおかげでなんとかこてんぱんな目に遭うところまでは行っていないアメリカ、と言う感じだろうか。いろんな意味で大英帝国の懐の深さの怖さ、を感じてしまいますな。

今やアメリカが世界の情勢の中で一番大きな影響力を持った国家である事は間違いないのだけれど、でもやっぱりあの国は若造の国なんだよな。この先どんなスカをやらかすか判ったもんじゃない、という気はする。日露の時にはルーズベルトの外交はそれなりの成果を上げる事ができたけど、それはまだ、あの国が正式に世界一の国家、などとは言えない時代だったから。どこかに奥ゆかしさがあったのだよね。その辺も無くしちゃった今のアメリカが、なにかの弾みでずどーんと値打ちを下げちゃうような事があるんじゃないかなあ、なんて、ふと思ったりもしますな。

で、そうなったときでも英国ってたぶん、「困ったもんだねえ」とか言いながら飄々と生き延びてるんだろうな。

でも日本はどうなるだろうねえ。

などと要らん事を余分に考えながら楽しませていただきました。櫻井よしこの頭悪そうな"解説"が邪魔だが、それ以外は、なかなか。

(★★★)

本日のツッコミ(全3件) [ツッコミを入れる]
もんちぃ (2004-11-17 23:03)

そりゃ大変ですな。カゼの連鎖反応にお気をつけあそばせ。

rover (2004-11-18 00:28)

昼間さんざん寝たので、「寝付けん」とか言って今酒呑んでますよ(w。

TUX (2004-11-18 04:42)

●なんかインフルエンザも流行ってるらしいですから、気ぃつけて下さいね。<br><br>●梅田界隈で、アルコール消毒大会とかやるときは、気軽に声をおかけください(爆)


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