ばむばんか惰隠洞

«前の日記(2005-02-19) 最新 次の日記(2005-02-21)» 編集

カテゴリ一覧

Anime | AV | Baseball | Books | CGI | Chinema | Comics | CS | Day | DVD | Event | F1 | Games | Hobby | HTML | Kindle | Misc | mixi | News | Oldbooks | PC | Photo | SpFX | Stage | tDiary | Tour | TV | web | 逸級介護士


2005-02-20 [長年日記]

[TV] 定期視聴番組 (18:12)

「ジパング」、「グレネーダー」、「砂ぼうず」、「魔法戦隊マジレンジャー」、「仮面ライダー響鬼」、「ふたりはプリキュアikry」、順番入れ替わったけど「ウルトラマンネクサス」、「種デス」。

で、ようやく正気に返った調子を掴んだ感じの「ネクサス」(#20:「追撃」)。みんなから忌み嫌われてるけれど、メモリーポリスのみんなの活躍で、やる気を取り戻す若者たちもいるんだね。ありがとう沙耶リーダー…というお話ではもちろんなくて。まだまだダーク路線に足突っ込んでいるとは思うけど、ちゃんとお話で引っ張れるようになってきてるなあと思う。変身するなりへなへなと倒れ込んじゃうウルトラマンってのは、ありなのかなあとも思うけど。

まあ暗黒ぶりならデス様の方が最近は遠慮会釈ないけど。その割に話の底が浅いのがなんだかなあという感じ。シン君の性格もずいぶん変わったような気がするし。とりあえずザフトの陸上戦艦の名前が「デズモンド」と「バグリイ」だったのでちょっと笑っちゃった、ということで。もちろん「高い砦」のあの格調なんざ望むべくもないんだが。

日曜日の分は、ええと、「マジレンジャー」は一回目にも感じた「ゴレンジャー」臭さがさらに加速しているかなあという感じ。ただ、「ゴレンジャー」のあの愛すべきあっけらかんとしたところ、は残念ながら上手く今風に置き換えられてはいないみたいだね。そこらでこの先、このシリーズを楽しく見ていけるか、背筋をぞわぞわさせつつ付き合わされれるのかが分かれるのかも。オレ? オレは今のところはまだ、後者かなあという感じです。「響鬼」は、んまあこれはこれで面白いんじゃないですか。

[Books] 終戦のローレライ (24:42)

本書カバー 福井晴敏 著
カバーデザイン 樋口真嗣
デジタルドローイング 江場佐知子
講談社文庫
ISBN4-06-274966-1 \467(税別)
ISBN4-06-274971-8 \695(税別)
ISBN4-06-275002-3 \695(税別)
ISBN4-06-275003-1 \695(税別)

歌と饒舌の戦記(あ、あれっ?)

第二次大戦勃発後から、海兵たちに伝播した伝説、「シー・ゴースト」。あり得ないほどの狡猾さと精密さで獲物に忍び寄り、一撃のもとに狙った相手を屠ってはふたたび海の奥底に消えてしまうという一隻の潜水艦。だがそれは伝説などではなかった。ナチス・ドイツによって無定見に繰り広げられた人体実験の偶然の産物として生まれ出た一人の超常能力を(望むことなく)持たされた少女と、彼女のその能力を最大限に引き出すべくデザインされた"システム"を組み込んだ一隻の潜水艦。それは今、ついに降伏したドイツ第三帝国を見捨て、今なお戦うことをやめない日本へと接近しつつある。自らの生存を賭けるもの、新たなる世界秩序の第一歩にそのシステムを今一度使おうと目論むもの、そしてそのシステムを、何かが狂ってしまった祖国に、一旦死亡宣告を与え、しかるのちの民族の再生の発火点にしようと目論むもの、それら様々な者たちの思いの交差する海域へ…

公開間近の「ローレライ」の原作は、文庫本にして4分冊の大著。やや大きめの活字が使われていることを考慮に入れても、すさまじいばかりのボリュームであることにかわりはない。で、このすさまじいボリュームの小説に、途中で本を措くことをもったいない、と思わせるだけの読み応えに満ちた密度とヒキ、そして随所で用意されている"燃える所"と"泣き所"の匙加減のうまさは超絶的。ページターナーとしての福井晴敏の実力は十二分に堪能できる。敢えて「戦争」をそのテーマに採り、その中で徹底的にエンタティンメント要素を燃え上がらせ、しかもあの戦争を経験し、そして只今現在ここにある我々に、戦争ってなんだったんだろう、日本人ってなんだったんだろう、それから、日本人ってどうあるべきなんだろう、という真摯な問いかけを叩きつけてくる、その態度にも好感を持つ。持つんだが……。

描きすぎだ。

まずい"描きすぎ"と、描くべきではなかった"描きすぎ"がこの本にはあると思う。まずい描きすぎ、とは、この物語に登場する人物たちの個々の掘り下げのパート。少なくはない登場人物が、それぞれの(お話の中での)持ち場で、精一杯生きていく、そこは感動的なのだが、それらの人々が伊507こと「シー・ゴースト」に集まってくるまでのいわゆる回想シーンが、常に第三者から見た物語として綴られているのだな。主人公となる少年、征人の物語も、運命の美少女、パウラも、征人が少年から大人になる、その大事な瞬間に彼の背中を時には支え、時には乱暴にこづいてやる掌砲長、田口(この物語の中でもっとも魅力的な人物は間違いなく彼だろう)にしても、すべてが、物語はおのおの異なるものであるとはいえ、それが全く同じフォーマットで語られる。それはお話に冗長感しか付加しないと思うんだがな。時には第三者の口を、時には親しい者の口を借りて、そしてまた時には自らが苦しみつつもすべてをぶちまける、そういう小説としての小技をこの作家はなぜか忘れてしまっているような気がする。技巧なんて時には邪魔なものでしかないときもある、というのも判るけど、ここではその技巧は絶対に必要だったのではないだろうか。なぜって、これは何よりもまず、エンターティンメントなのだから(この件については後でもう一度蒸し返します)。

もう一点の、描くべきでなかった描きすぎ、はもう、読んだ方なら判っていただけるのではないだろうか。私はこのお話、文庫版の4巻の396ページで終ってしまっていい話だと思う。というか、(いきなり蒸し返すが)それまでの冗長な部分を切って捨てれば、4巻の396ページ、を文庫版3巻のラストあたりまで持ってくることもできたのではないか、とも思う。ネタバレにならないように書くのが難しいので、はじめにネタバレになったらごめん、と謝っておきますが、特に三巻以降、この物語には明らかに、物語の直接的な当事者とは別の、とっかかり易いキャラクターを利用した作者のメッセージが色濃く込められてゆく。物語に作者のメッセージが込められていくこと自体には文句はないけれど、物語を放ったらかして、作者が、作者の気持ちを吐露する場を自分の小説の中に作ってしまうのは問題だと思う。で、残念ながら福井晴敏はこの作品でそれをやってしまっている。で、それは逆効果でしかないのだよ。言いたいことを言い切れなかったかも知れない、という不安は、多分お話を書く人ならば誰もが持つ物なのだろうと思う。思うけど、そこで最後の最後は読者に「最後はあなたが察してくれ」という形でお話を閉じることができる人こそ、私は真の作家なのだと思う。お話のテーマが「戦争」であったり「日本人」であったりするが故に、作者はどうしようもない"言い足りなかった"感にさいなまれてしまったのかも知れないが、それでも最後の最後は、読者に任せるべきではなかったか、と思うのだな。ここに福井晴敏という人の"若さ"を感じてしまう。若者よ、それを言いたくてしかたがない気持ちはわかるのだ、でもそれは、言ってしまったら値打ちががくんと下がってしまう類の言説なのだよ、と。

戦争はいけない、的な比較的イノセントな物言いから先の大戦で日本人はどうだったのか、それを踏まえてこの先の日本人はどうあるべきなのか、というやや小難しい論説まで、人はみなそれぞれに、それぞれなりの気持ちを持っているはずなのだ。それをわざわざエンターティンメントの中で懇切丁寧に再描画されなければ、そのことに思いをいたす人間が皆無になっている、などと私は思わないのですよ。例えば本作品、前にあげた4巻の396ページ、に至る流れというのは、私にはマクリーンの「女王陛下のユリシーズ号」の、涙無しには読み進めることのできないラストと被る(本作品にはそれ以外にも、結構"被る"ネタは多いんだけど)。だけど、マクリーンはユリシーズ号の最後を書いた後、だらだらとページを費やすようなことはなかったぞ、と。我々はユリシーズ号のラストを読んだとき、その後に数ページしかなかったとしても、「終戦のローレライ」でその(件の作品で、ユリシーズの最後に匹敵するシーンがあった)後、だらだらと書きつづられる100ページほどの後日譚から得ることのできた以上の感慨を、ほんのわずかの描写から感じ取れたはずなのだ。そのくらいのことはヘタレな我々でもできるはずなのだよね。それが斟酌できないくらい、作家の方に、何か思い詰めるような事情があったということなのだろうか。

この辺に福井晴敏の若さ、みたいなのを感じてしまうのだな。それはなんというか、好ましい青さではある、けど本読みとしては「勘弁してくれよ」と思ってしまうような、そんな感じ。なのででたらめに読み応えのあるこの作品、すばらしいと思うし、まあ映画の方も楽しみではあるんですが、小説の出来としては、私は「亡国のイージス」より下、の評価を付けざるを得ないです。面白いんだけどね。

あーあとこれは蛇足ですが本作にいまいち惚れ込めない理由に追加。

恋愛成分がたりないんだな、これ。そこもやや不満。これだけのボリュームを持ってして、征人とパウラの恋物語がそんな程度じゃいかんだろー、と。これはまあジュヴナイル好きなおじさんの繰り言ってことで無視してもらって良いんですけど。

(★★★☆)


Google search
www.bumbunker.com
Web
2005年
2月
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28

ここ1週間分の話題

傑作です

懐かしさ満点

妖精を観るには…

ジュヴナイルとしてなかなか良質

バナーが必要ならこちらを
バナー素材

古本屋やってます
特殊古本屋 軽石庵

2003年9月までのサイト

巡回先
ROVER's HATENA

あすなひろし追悼サイト
あすなひろし追悼サイト

twitter / karuishian
«前の日記(2005-02-19) 最新 次の日記(2005-02-21)» 編集
©1996-2020 乱土 労馬:l-rover@kobe.email.ne.jp