ばむばんか惰隠洞

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2005-06-22 [長年日記]

[Books] 囚人護送艦、流刑大陸へ 英国海軍の雄 ジャック・オーブリー 5 (24:15)

4150410836囚人護送艦、流刑大陸へ 下(O'Brian,Patrick/著 大森洋子/翻訳 オブライアンパトリック/著) パトリック・オブライアン 著/大森洋子 訳
カバーイラスト Jeoff Hunt
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫NV
ISBN4-15-041083-6 \700(税別)
ISBN4-15-041084-4 \700(税別)

パンの木はどこに行った?

モーリシャス要塞での功績で、ようやく本国でもそれなりの名士としての地位を得たジャック・オーブリー。だが、立派な邸宅を構え、ようやく借金生活から逃れることができたとはいえ、やはりジャックは海の男。陸(おか)ではどうにも本調子とは言い難い。悠々自適な名士暮らしの中で、いろいろな事業などに手を出しもするのだが、海の上とはやはり勝手が違う様子。そんな、心のどこかに悶々としたものを秘めていたジャックの元に、ようやく新しい任務が。やや旧式ながらも改修工事を施された54門艦、レパード号を得てジャックが臨む新任務とは、しかし彼の理想からはほど遠いものだった。流刑となった囚人たちのボタニー湾への輸送任務。しかもその囚人たちの中には、軍艦には不吉とされる女性囚人たちも含まれていたのだ……

オーブリーものの第5作。今回はバウンティ号のブライ艦長がお話の背景に重要な意味を含ませる意味で登場する(ただし本人は登場しないんだけどね)。ストーリー全体のトーンも、オーブリー的バウンティ号の物語のなぞり直し、的な色合いが強いかな。オブライアン的にはブライ艦長よりも"バウンティ"で反乱を起こした水兵たちの方により感情移入できる、と考えているのかな、というような印象がストーリーからは匂ってくる。まあブライ艦長に問題あり、とするスタンスは映画なんかでもお馴染みではあるけどね。

そこは興味深いし、相変わらず感じる敢えて王道を外した帆船モノを書こうとしているように見えるオブライアンのスタイルを、決して否定しようとは思わないのだけれども、どうだろう、口当たりを変えたいと思ってやったのかも知れない幾つかの"定番はずし"が、お話の面白さ、という点でどうもうまくない方向に行ってしまってるんじゃないかという気がしてしまうのだった。お話のスジとしては決して悪くない。でもお話そのものは面白くない、というか心底盛り上がれないぞ、と。

こういうタイプの小説、やはり"定番"って物をあまり甘く見て欲しくない気がするなあと思う。定番が定番たり得るのは、それが読む人にとって最大公約数的に満足感を与えることができる可能性を秘めたものであるわけだし、それだからこそ定番をしっかり定番として昨日させるのは難しいわけで。残念ながらオーブリー物はまだ、定番のフォーマットの中で読者を満足させる職人芸のレベルにも、新しい切り口とその魅力を大きくアピールできるほどのお話の"強さ"にも、今のところは達していないんじゃないかという気はする。もっと面白くなりそうなのに、そうならないままお話が終ってしまう、という欲求不満を、このシリーズでは毎回感じてしまうんだよな。

(★★☆)

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bongo (2005-09-13 00:32)

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