ばむばんか惰隠洞

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2005-06-04 [長年日記]

[Books] 傀儡后 (24:02)

本書カバー 牧野修 著
カバーイラスト 山本ヤマト
カバーデザイン 岩郷重力+WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫JA
ISBN4-15-030788-1 \840(税別)

シャロウ・インパクトがもたらす近未来SF

地球に飛来したイワクラ・ナガオ彗星。規模こそ小さかったが、彗星から派生した小隕石は、大阪、守口を中心とする関西地方に多大な損害を与えた。そしてその3年後、隕石落下地点をその起点とするかのように、「麗腐病」と呼ばれる奇病がじわじわと世界を浸食していく。そして20年、ハイテクと猥雑が混在するこの街でいま、ひとつの非合法ドラッグの噂が若者たちのネットワークを中心にじわじわと広がっていた…

いろんなところで谷甲州氏の「エリコ」を思い起こしてしまう作品。猥雑な近未来の関西、次々とぶち込まれるSF的アイデア、そして日本SFが本来持っていた「種」であったり、そのまた上にあるかも知れない何かへの思索、みたいなものを盛り込んでラストまで突っ走る。「エリコ」がその持ち味にジェンダーを絡めたポルノグラフィックな要素を色濃く持っていたのと同様、こちらでもやはりジェンダーが結構な比重を持っているあたりは、いわゆるフェミニズムSFの(一時的な)台頭以降には無視できない流れだったりするということなのかな。あと、こっちでは「エリコ」以上にワイドスクリーン・バロック的な小道具が満載でそこも楽しい。

通して読んだ印象は、そうだな、カエアンの聖衣な幼年期の終わり、ちょっとサイバーパンク風味、みたいな感じでかなり楽しく読めた。ただあれだ、「かめくん」なんかでも感じた、"気持ちは凄くわかるんだけどそれを持ち出されるとこっちは妙にケツのあたりがむずがゆいのよ"感もあって少々微妙ではありますな。ここらは牧野氏のソノラマ文庫のあれとかで感じたものを、ごくわずかではあるけどやっぱりこの作品でも何ヶ所かで感じてしまったわけで、なんて言うんでしょうね、こう、気持ちはわかる、でもそこでそれを持ち出されると、オレの中でのSF読んでるぞな快感、みたいなものがちょいとばかり削がれちゃうわけで、ええい言ってしまえ、「仮面ライダー」持ち出されちゃぶちこわしなんだよオレ的には。

すいませんね、私にとって(昭和の)「仮面ライダー」って、どっちかというと興醒めアイテムなんですよ。この本、かなり面白いと思うんだけど同時に興醒めアイテムに活躍されちゃったあたりでちょっぴり残念賞側にシフトしちゃったかなあ、つーとこでしょうか。

どーでもいい話なんだけど、クライマックスで出てくる"桃色の粘度の高い何か"、ってのは、本書の文脈からしてやっぱりスーパースカルピーなのかねえ、とか思った。あと、やっぱりこのカバーは、ちょっとなあ…。

てあたりで、そこそこ楽しんだけどでたらめにおもしりゃぁぁぁ、ってとこまではいかなかったかなあ。

(★★★☆)

[Books] ドーバーの伏兵気弱な海尉ジェラルドの冒険 (25:53)

本書カバー エドウィン・トーマス 著/高津幸枝 訳
カバーイラスト 小野利明
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫NV
ISBN4-15-041080-1 \900(税別)

HMで出せよ

参加し、生き延びさえすればほとんどの将兵は何らかの叙勲に与れたはずのトラファルガルの海戦で、叙勲の対象となり得なかった不名誉な兵士の一人、それが私、英国海軍海尉、マーティン・ジェラルドだ。戦闘前に酔いつぶれ、世紀の大海戦に参加しながら何一つ戦いに参与することなく生き延びた私は艦隊の主力艦である戦列艦勤務の海尉から本国沿岸で密輸業者を取り締まるカッター船勤務へと言う、事実上の体のいい左遷の左遷の憂き目に遭う。そんな私が新しい勤務地に出頭するまさに前日、思いもよらないトラブルに巻き込まれてしまうとは。事の起こりはやはり酒だった…。

胆力なし、酒好き、女に弱く行く先々で災難に遭遇してしまう船乗りを主役に据えたシリーズ。ハヤカワも海洋冒険ものの範疇に入れたいと思ってNV側に入れたのだろうけれど、一作目を読む限りは、とてもじゃないけど私やあなたが期待する、海洋冒険小説のテイストには満ちあふれていない。端からはダメ人間に見られてるし、実際褒められたところがそんなにある訳じゃないんだけど、それでもひとつには運、それからダメ人間なりに、それでも頭の回転とかいざというときの肝の据え方とかでそれなりに見るべきところも持っている人物が、なんとか自分の苦境を好転させようとがんばるお話、って訳で、いわゆる「水モノ」を期待して読むとちょっとがっかりしちゃうかも。んじゃあ近代英国を舞台にしたミステリとして読めば面白いか、といわれるとそっちも少々怪しいのだけれど。

なんつーかなあ、「トラ、トラ、トラ!」だと思って読み始めた本が「陸奥爆沈」(いやこれはこれで良い本ですが)だった、みたいな恨みは残るかも。軽いミステリとしてはたぶん、水準作なんだと思う。んでも海洋冒険小説としては不満が残るし、歴史ミステリとしてはツッコミが少々浅い、と感じてしまう。つまらなくはないけど、キャラの書き込みなんかでどうにも浅いよなあ、と思ってしまうところはある。そのあたりは少々残念かも知れない。どちらかというとこれはミステリのジャンルに入るべき本だよね、というところ。続編では様子が違うのかも知れないけど、どんなもんだろな。

全体に悪くはないんだけど、かといって夢中になって続きが待ち遠しくなってしまう、ってところまでは行ってない感じ。主人公のキャラ造形も、そのデフォルトのダメぶりがうまく活きてない感じがあって、大変に魅力的、というところまでは行っていない感じだな。とりあえず続きに期待…したもんだかどうだか、やや微妙。

(★★★)


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