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ちと買物の必要があって三宮出撃。値札剥がしすら鈴蘭台の田舎では手に入らないのですよ、とほほ。ってことでハンズで目的のブツを無事確保。せっかくだから三つぐらい買っておこう。VISAのギフトカードあるし(なんかもったいないな)。
あとは三宮から高架下の古本屋さん巡り。んまあ今は家の在庫がやや過多なので、よほどの物がなければ買いませんけど。で、そうそうよほどの物も出ちゃおりませんな。
ところで高架下と言えば何でもありの世界。多くは古着屋さん(若い人向けからジジ臭いヤツ、ミリタリーマニア向け、いろいろ揃ってます)だったり靴屋さんだったりするんだけど、最近はガシャなんかのオマケやらミニカーのショップやらも出来てる。ペットショップもあったな。んで先日見かけて気になってたのがこのお店。中古パチスロ専門店。基本的にいろんな古い物を扱うお店が集まる高架下だけど、これはちょっと驚いたなあ。結構お客さんは入ってて、じゃらじゃらと景気のいい音も聞こえてくるんだけど、これ、実際に買うお客っているのかしらね。買ってどうするんだろう。そもそも家で遊んで面白い物なのかな。
とはいえちゃんとサイトもあるし、店舗もいくつか出してるみたいだなあ。してみると儲かる商売なのかしら、ううむ。
マイクル・スワンウィック 著/小川隆・金子浩・幹遥子 訳
カバーイラスト 瀬戸羽方
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ。
ハヤカワ文庫SF
ISBN4-15-011558-3 \900(税別)
日本版オリジナル短篇集。表題作他全10編の中短篇を収録。
解説にある著作リストを見ると、スワンウィックって人は長編よりも中短篇が多い作家、と言う印象を受ける。にしてもここまで日本で読める長編が「大潮の道」しかないってのは何だかなあと思ってしまうな。少なめとはいえ長編も数作は発表している人なんだが。
そんなスワンウィックの日本版オリジナル短篇集がこちら。本書が話題になってくれたら、未訳の長編もポチポチと翻訳されてくれたりするのだろうか、いや是非そうなって欲しいもんだ、と思わせてくれる魅力にあふれていてなかなか良い。飛び抜けて新しいとか、ショッキングとか言うわけではないのだが、何というのか、SFの王道をずしんずしんと踏みしめながら進んでいく感じ。非常にあんばいの良い作品が並んでいて、しかも今となっては少しばかりの懐かしさまで感じちゃって大変オトク。ロートルSFファンにはとてもありがたい本のような気がするな。
と言うことでそれぞれのお話の簡単な感想を。
ワシらが青二才の頃は"ギンヌンガ・ギャップ"ち言われとったヤツじゃのう…というのはともかく。
エイリアンとのコンタクトで得られた物質転送技術、果たしてその技術は人類にとって有効なのか、そもそもエイリアンたちにはいかなる目的があるのか、って設定の元で語られる新しい人類への可能性のお話。初期の作品と言うことで少々冗長に感じる部分もあり、テーマがはっきり語られたかというとそのあたりはちょっと辛い。オジサンこういうお話読むとつい、"宇宙大作戦"の良いカークと悪いカークのエピソード思い出しちゃうってあたりもマイナス要素か。ただ、お話の本筋とは関係ないけど、ここで描かれている未来の風俗とかは結構興味深かったりした。
ちょっぴりダークな時空ロードムービー風味、とでもいいますか。時空を超えていろいろやらかす訳なんだけど、その超え方が実に魅力的。
無茶無茶バカバカしいグローリアーナ、つーのはいくら何でもあまりに乱暴な例えかしら。名前繋がりでしかないんだけど。凸凹詐欺師コンビが主人公のシリーズ物の一作。充分に発達した科学は魔法になっちゃったよーん、ってお話(そうか?)。このエピソードで発達しまくる小道具の正体が爆笑モノだ。
紛争の絶えない地球と、その武器庫として機能する月のコロニー。微妙なバランスは一瞬にして崩れ、月のコロニーには危機的状況が訪れることになるのだが……。宇宙SFの面白さにミリタリー風味とサバイバル物の面白さを加え、さらに"人間性"って何だろう、ってところへの考察までしてしまうノヴェラ。この、人間性への考察みたいなものは、本書の他の作品でもしばしば登場する。
とってもダークでちょっぴりセンチな"スタンド・バイ・ミー"、かな。ラストが切ない。
本書中でもかなりのお気に入り。ファースト・コンタクト物なのだが、そのコンタクトの相手のアイデアにちょっと唸らされる。アイデアとディティールのバランスが実に、良い塩梅なんですわ。
かつて一種の狂人によって致命的なダメージを負ったスペースコロニー。二度とあのような惨事を起こさないためには何が必要なのか…。これも"人間性"って何だっけ、をテーマに据えた作品。こいつも好きなお話。背筋が凍る笑い、ってヤツを存分に味わえる。
そういえば"サウンド・オブ・サンダー"(原作はブラッドベリ)なんて映画がありましたな。あれと似たテーマの時間SF。これが筋立て、描写、ともに何とも懐かしいオーソドックスさに満ちていて嬉しくなってしまう。
「スロー・ライフ」と対をなすファースト・コンタクト物の佳品で、これもかなり好き。このシチュエーション(地球外の衛星上でアクシデントにあって、何とかして生き延びられる場所までサバイバルしながら進まなければいけない)は、それこそ古今東西、活字、映像、漫画などで表現されてきたテーマなのだけれど(「プラネテス」や「MOONLIGHT MOLE」でもありましたね)、ここにファースト・コンタクトを絡めるあたりはちょっと新しい。これも「スロー・ライフ」同様、ファースト・コンタクトの相手に関してのアイデアが光る。
オーソドックスなSFスタイルに満ちた本書の中でも極めつけにオーソドックス、と言うか、なつかしSFとでも言ったらいいんじゃないかと思えるテイストの作品。60年代SF傑作選に入ってても違和感なさそう、ってのは良いことなのか悪いことなのか。いや、好きですけど。
全体に漂う何ともいえぬ"あんばいの良さ"が心地よい短篇集。その中で実は、前にも書いたとおり人間性への考察やどうにも微妙にダークな風味も加味されてたりして油断できない一冊でもあるのだけれど。やあ、堪能しました。
(★★★★)
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