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マイクル・コニイ 著/千葉薫 訳
カバー 小松原英
サンリオSF文庫
どこかで戦争は続いている。庶民の暮らしにはそれなりの影響が出ているようだ。そのせいか、父が政府の役人である僕の家に対する世間の目は、最近どことなく冷たく、よそよそしい。だがまあそれはいい。僕だって両親は好きじゃないのだから。そんなことより今はこれから始まる夏の休暇のことを考えよう。父がコテージを持つ海辺の街、パラークシ。そこで去年、僕は彼女にあったのだ…
商売モノに手をつけるシリーズ。以前入荷したときには瞬殺モードでお買い上げ頂いたもので読めなかったもの、つか前はオレの値段の付け方も、ちょっと安過ぎたかもわからぬ。いやしかし、やっぱりあれぐらいが適正価格のような気も、ごにょごにょ。
まあそれはともかく。お話の出だしは前に書いたような感じなんだけど、実はここは地球とは違う世界で、彼らも人類と直接関係がある種族なのかは良くわからない(美人の条件はポン、キュッ、ポンらしいんで安心だけどね)。で、彼らが住む世界も地球とはかなり様子が違う。そこに住まう動物たちもまた、地球のそれとは異なる生態系の許に生きている。まずはこのあたりのエコSFみたいな部分の過不足のない描写がかなり良い。生態系を含む惑星環境全体の問題が、実はお話の展開の中でじわじわと重要な意味を持ってくるってあたりの、お話の持って行き方も上手い。
が、それ以上に、圧倒的に、超絶的に、天下無敵にすばらしいのは、この作品が、人間がひとりも出てこない異世界SFであるにも関わらず、人間である我々が読んで限りなく感動できるジュヴナイルとして完璧に成立している、ということ。
しょっちゅう言うんでミミタコの人もいらっしゃるかも知れませんけどまた言いますよ。いいジュヴナイルの成立条件、それは、
がしっかり描かれていることであって、さらにこれにもう一つ、"夏休み"が加わったら向かうところ敵無し。で、本作はそいつを完璧に満たしている。しかもその上にいかにも英国らしいシビアさも併せ持ち、単純にハッピーエンドで喜ぶこともできない構造も含んでいる(『トリポッド』なんかもそうだったんだけど、英国ジュヴナイルSFってのは特に恋愛の部分に、一筋縄ではいかない要素を入れてくるのを忘れないですねえ)。タイトルに秘められた深い意味もまた、読み進めていく内にたいへん深い意味合いを持ったものであったことがじわじわとわかってくるわけで、もうここまでやられてはオジサン、最後の一行を読み終えたところで滂沱の涙を止める術を知りませんですよ。
別に年少さんに向けて書かれたものでなくたって、その本質が良質のジュヴナイルとして成立している小説というのは間違いなく存在していると思う。本書はまさにそれ。若い人にこそ読んで欲しい、が正直コイツはお店に出したくなくなっちゃったなあ(w。
(★★★★★)
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