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ウィリアム・S・バロウズ 著/諏訪優 訳
カバー 久里洋二
サンリオSF文庫
ノヴァ=超新星爆発。それは世界に多量のウィルスを巻き散らす。まき散らされたのは"言葉"、産み出されたものはありとあらゆるフリークス、ヒロシマとナガサキの大爆発、書き換えられる細切れの情報たち。ビートニクを代表する作家のひとり、バロウズの代表作のひとつ。
商売モノに手をつけるシリーズ。「裸のランチ」、「爆発した切符」、それから本書。タイトルからして挑発的な"ビート・ジェネレーション"を代表する(というかこの人はその産みの親とも言えるわな)作品は、少なくとも最初から"小説"の体裁を取ることを拒否している。有名なカットアップ・フォールドイン(すでにある様々な文章の一部を切り取って並べていく、後にはそれもめんどくさいので、アリ物の本のこのへん、ってあたりを折り曲げて並べてみるという、言ってみれば非常にズボラなサンプリングの手法だわな)を駆使して作り上げられる世界は、誤解を恐れずに言うなら、何かに追いまくられてひたすら逃げまくる人間の言い訳。
逃げてる最中の人間は、とてもじゃないけど筋道立った"自分がなぜ逃げているのか"に対する説明なんかできやしない(そんな暇があったら一歩でも遠くに逃げたい)わけで、当然その言い訳は支離滅裂になる。その支離滅裂ぶりってのは端から見てるとなんか良くわからんけど妙に面白い。この本が持ってる、良くわからんけどとりあえず次のページもめくってみようか、って気にさせる力の根源ってのはそのあたりに潜んでるんじゃないだろか、って気はした。正直"本"としてはつまらん。だがだからと言って適当にページを飛ばして読むことを、読者に「ま、それもいいか」などと簡単に納得させてしまうほどにつまらん本ではない。なかなか微妙だ。
作家の人となりなど調べてみると、この人はこの人なりに悲惨な人生送ってて、アメリカを代表するようなタイプライター会社(ってとこがすでに皮肉かも)の御曹司に生まれながら家業を継ぐことを良しとせず、私立探偵やらヤクの売人やらを転々とし、自らも一時はヤク中になり、ラリって自分の嫁さんの頭を拳銃で吹っ飛ばし、南米に逃げ出したりしたような人間であるらしい。物語のキャラとしてはおいしいが、間違っても自分の半径1メートル以内に入って欲しいタイプの人じゃあない。筋金入りの"追いまくられキャラ"なんである。その追いまくられっぷりは尋常ではなく、そこに読む側にとっての面白さ、みたいなモノがうまれておるなあという気はする。そこをこの作家はちゃんとわかってて、そのキモの部分をしっかりと作品の中で増幅させてきている感じはあるね。
ワタシとしては総じてつまらないのだ、この本。でも、つまらないのだけれど読むからにはとばし読みなんかするんじゃなく、ちゃんと各ページに目を通しなさいよ、と行間からキツく言われているような気がして、手を抜きづらくなってしまう妙な本。面白いか? といわれたら面白くない、と答える。つまらんか? と聞かれたらいやそういうわけでも、と答える、そんな本ですなあ。
山形浩生さんの解説、コメントも興味深く、示唆に富んでいる(ワタシは山形さんほどにはすぱっと読み切れないけど)ので、是非参考に読んでみてくださるとよろしいかも、です。
(★★★)
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