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スタニスワフ・レム 著/深見弾 訳
カバーイラスト John Harris
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011680-4 \840
ISBN978-4-15-011681-1 \840
ようやく人類が太陽系以遠にもその足跡を付け始めていた時代。若き宇宙飛行士訓練生、ピルクスもいよいよ最終試験である飛行試験の時が近づいてきていた。飛行試験に赴いた訓練生は、試験の結果がどうであれ、二度と訓練所に戻ってくることはない。いったいいかなる試験が待ち受けており、その先に何が待っているというのか……。
東欧SFの巨匠レムが描く、宇宙開発史。10編収録。
これまた古本屋泣かせのアイテム。藤色のカバーの分厚いハードカバー、この先は古本屋においしい思いをさせてくれなくなっちゃうのね。とは言え世の中には「読んどこう」と思う間もなくお買い上げいただいちゃったものだから、今回の文庫化が結構ありがたいと思っちゃうマヌケが古本屋の中にもいるわけで。ああオレだ(w。
さて前説では「宇宙開発史」なんて括りを付けてみたけれどこれだけでは少々表現が不足しているとも思えるわけで、もっと正確に表現するならば、"マン・マシン・インターフェースに主眼を置いた、宇宙を舞台にしたSF"って事になるのかな。いわゆる"ハードSF"で括られる、理屈とテクニカルタームが溢れかえる宇宙とはちょっと違った世界がここにはある訳で、どこが違うかと言えば、レムはあんまり宇宙の方には目を向けず、あくまでも人と機械の関係性の方に注目しているところ、と言えるかな。数字や理屈が溢れかえる"ハードな"宇宙SFとは違い、こちらでは人と環境、人と機械たちとの間の関係性についてのピルクスの内省が溢れることになる。"ハードな"事象に対して理詰めの対応がなされるのではなく、ある意味哲学的な考証が加えられるのがレム的なハードSF、って事になるのだろう。うん、これもまた正しくハードSFであると思うのだよね。
この短編集では、オートマトンと呼ばれるロボットたちが、人間とともに宇宙開発の現場で重要な役割を果たしている世界が描かれるのだけれど、たとえばアシモフの陽電子シリーズに登場するロボットたちが、例の三原則の縛りの下でどういう動きをするのか、できないのか、そのことが起こった事件の中でどういう意味を持つのか、を解き明かしていく面白さがあったとすれば、レムのこのシリーズでは、その都度人間の都合で行動の可否を定められてしまったロボットたちと人間との関係性、みたいなところをああでもないこうでもないと考えながら真相らしきモノに迫っていく、非常にあやふやなところのあるハードSFとしての面白さ、みたいなところに魅力があるのかも知れない。
数字にいじめられることがない分、今度は雰囲気を醸し出すためのシチュエーションのワキを固めるための描写の多さなどに時々辟易しちゃうところもあり、手放しで「やっぱレムはすげー!!」なんて事にはならないんだけど、それでもここでレムがやってたこと(1970年代にこれを書いたわけだからね)が、士郎正宗-押井守ラインで形を変えて映像作品としてふたたびワシらの目の前に提示されていると思えるあたりに思いをいたしてみるならば、何だかんだ言っても結局、「やっぱレムはすげー!!」って結論に落ち着いてしまうのかも知れないね。今となってはやや冗長と思えるところも無くはないと思うが、それでもこいつは読んで損なし。かつての古本屋的スーパーサブなアイテムだった、ってところを別にしてもな(w。
★★★☆
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