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林譲治 著
カバーイラスト 緒方剛志
カバーデザイン 岩郷重力 + Y.S
ハヤカワSFシリーズ Jコレクション
ISBN978-4-15-208678-5 \1700(税別)
火星に送り込まれた流刑者たちから始まり、今や地球に比肩、時にはそれを凌ぐ技術レベルの文明世界を作り上げたAADD。今彼らは三つの困難に直面していた。修復不可能なまでに悪化した、国連を代表とする地球政府との関係、その存在が認識され、今も太陽系に接近していることが分っている、ストリンガーと名付けられた異星文明とのコンタクト、そして彼らの生存の基盤とも言える人工降着円盤、ADDに検出された微妙なシステム的なズレ。国連軍の侵攻が避けられない情勢となった今も、AADDが対処すべき最優先事項はストリンガーとのコンタクト。だがADDに発見された不具合の兆候が解決できなければ、他の二つの問題への対応もまたままならない。AADDは伝説的科学者、アグネスにこの事態の収拾を依頼するのだが…
買取物件ピックアップ・シリーズ、ええと、その10? 短編集「ウロボロスの波動」の時代背景に連なる長篇。タイトルが結構意味深で、「沈黙」する異星人とコミュニケーションできずに結果として「沈黙」を返される結果になってしまう地球とAADDの人々との関係性ってあたりにも少し思いを致すことになる。そこには少しばかり構成としての具合の悪さも感じなくはない、というか正直序盤の引っかかりは結構なものだったし、中盤から後半にかけての動きの大きい部分については、仮想戦記も多くものしておられる林氏ならではの、宇宙での戦闘シーンを存分に堪能できるってな役得はあるけれど、そこが見せ場になるってのはタイトルとの関係性から引っぱって考えたときにどうなんだろう、って部分もあったりする。正直少々いびつな構成の小説であるという気もするんだが、いろんな文句も最後の最後で全部どこかに持って行かれちゃう。
燃えるSFって、最初にどかんとショックを持ってくる(古くは『第二段階レンズマン』、最近だとなんだろう、『移動都市』とか『シンギュラリティ・スカイ』あたりかな)か、最後の最後でどかんとどんでん返しを持ってくる(こっちの代表は『星を継ぐもの』かね)かのどちらかになるのではないかと思うんだが、そういう意味では本書は後者に属している。ハードな宇宙SFとしての側面とSF要素を色濃く持ち込んだ仮想戦記的な側面を、ややもたつきつつも良い具合に盛り込みつつ、最後にこれまでのお話の全てをまとめて面倒みちゃう、豪快な解が一つ投げ込まれたところで、いろんなものがどうでも良くなってしまう。最後の最後でクラーク的長期ヴィジョンをどかんとぶち込まれたような気にさせられる、みたいな。林譲治的「2010年」と言えるような作品、と言えるだろうか。
不満もいろいろあるんだが、ラストの一撃の鮮やかさにちょっとしびれてしまった。なんだか良く分からんけど、外に向かって意識を拡げる、って部分においてこれはまったく正しいSF。なかなか良いものを読ませて頂きました。
★★★★
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