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ジョン・スコルジー 著/内田昌之 訳
カバーイラスト 前嶋重機
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN978-4-15-011777-1 \940(税別)
過酷な少女時代を経て、今は新しい両親であるジョンとジェーンの養女として植民惑星ハックルベリーで穏やかな日々を過ごすゾーイ。そんな彼女の環境が大きく変わるときがやってきた。かつては優秀な軍人出会ったジョンの元に、新たに開発されることとなった植民惑星のリーダー役の打診がもたらされたのだ。新たな希望を胸に、目的地である植民惑星ロアノークへと赴くゾーイたちだったが…。
もはや「老人」も「宇宙」も全く関係なくなってはいるけれど、同じ時間軸と舞台設定、さらには前作「最後の星戦」と同じエピソードを、今度はジョンとジェーンの娘、ゾーイの視点から追っていくという凝った構成になっているのがこの作品。同じお話を別の視点から見て語る、という構成だと、著者本人も語っているとおり「エンダーズ・シャドウ」なんて前例があるし、日本軍だと高千穂遙氏の「クラッシャージョウ」と「ダーティペア」でやっていたわけで、高千穂氏もたいへんだった、とどこかで言っていたし、スコルジー本人も「甘かったッス」と述べている。すでにある物語との整合性をとりつつ、新しい物語としての体裁も整えなければいけないというのは、読み手からしたら想像もできない苦労があるのだろうな。
前作では基本的に新しい植民地にやって来た面々を率いるジョンとジェーンの、指導者としての苦労の方に主眼が置かれていたのが、こちらでは彼らの娘、ゾーイの視点から見た同じ時系列の物語が描かれつつ、中盤以降は前作で不足していた部分を補完しつつ、新たな物語が展開していく。
主人公のゾーイはその非常に特殊な生い立ち故に、数多の宇宙航行種族の中でも一目置かれている、ある一族にとって極めて重要な存在であるという特殊性を持たされた存在で、それ故に普通のティーンの女の子からは想像もできないくらい、いろんな重たいものを背負わされてしまった少女なのだけれど、序盤はそのあたりはあくまで隠し味で、年頃の女の子が見て感じるであろういろんな事をみずみずしく描写していく方に力が割かれている。これが中盤以降、ゾーイが持たされることになってしまった宿命や、前作までのしがらみとの絡み、さらには前作では語り切れていなかった、植民惑星ロアノークの先住民族との一件や、同じく前作では省かれてしまっていた、ゾーイが一時的にロアノークをあとにして何をしていたのか、といった部分が掘り下げられていくわけなんだけど、この辺のお話づくりの巧さがかなり心地よい。
少女が主人公だからそうなったのかはわからないけど、前作までのそれとはうって変わった文体(これは原作がそうなのか、訳された内田さんが意識的にそうされたのか、どっちなんでしょうね)やストーリーそのものの展開具合がすばらしくジュヴナイルしていて、オジサンそれだけでなんだかホワホワしてしまう。正統的なジュヴナイルのヒロインとしては、ゾーイは少々ツン成分が強すぎるんじゃないかって気もしないでもないけれど、ツンが強い女の子ほどデレた時の破壊力は大きいし、それはお話の上でとんでもない魅力になる、って法則性の再確認をこんなところですることになるとはね(w。
そんな、いい具合にジュヴナイルとライトノベルの美味しいところを拾いながら、最後は「論」でお話のクライマックスを盛り上げていくお話づくりがかなり素敵。お話のスケールの唐突な拡大っぷりはどうかと思わなくもないけれど、そこはゾーイが背負わされることになってしまったものの影響力のようなものを考えたらまあ、これもありかというところで。
キャラクタの立ち具合がとても良く、大変楽しめる1冊。ただし本シリーズの前作を読んでおかないといろいろつらいと思う。どれも面白いので、未読の方はそちらから、ぜひ。
★★★★
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