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グレッグ・ベア 著/矢口悟 訳
カバーイラスト 生頼範義
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN4-15-011477-3 \720(税別)
ISBN4-15-011478-1 \720(税別)
ハリ・セルダンの首相就任にまつわる事件からすでに40年。繁栄を極める帝国で、セルダンの不吉な予言は徐々にながら人々の口にのぼるようになっていた。政情不安の元になりかねないセルダンの警告に対し、帝国はついに行動を起し、かつては首相の座にあった人物に法廷での釈明を求める。同じ頃、セルダンの予言とは別のところで、今ひとつの政情不安の元が、密かに帝星トランターの下層部でその動きを興そうとしていた…。
さて今回のお話は、「銀河帝国の興亡」(1)の第1章、「心理歴史学者」のエピソードの中に組み込まれる物語。結果的にこのまえ、早とちりしてこの本を読んでおいて良かったよ。ガール・ドーニック、リンジ・チェン、懐かしい名前がいっぱいだ。その中で語られるのは、前作が心理歴史学的アプローチで試みる人類文明の敷衍、だったとしたら、こちらはアシモフのもう一方の看板シリーズである「陽電子シリーズ」へのベアなりのアプローチ、ってことになるのかしら。人類とか未来とか文明とか、小難しいことをセルダンの内省で延々考察しまくったベンフォードに対して、ベアは考えなければならない材料を、短い章立てで、かつ、さまざまなキャラクターたちのお芝居で組み立てながら、おなじみ「ロボット工学三原則」プラス「第零法則」とロボット、そしてロボットと人類の関係についてを語っていく。この辺の持って行き方が実にテンポ良く進む。早い話がベンフォードに比べてベアの方が、小説の作り方が上手いんだな。
ロボット工学の三原則、さらに長い歴史の中でロボットたちが自ら課すに至った第零法則をもって、表向きは存在しないはずのロボットたちが人類とどういう関わりを持っていくのか、その流れの中でR・ダニールに代表されるロボットたちとは別の意志を持つに至るロボットたちの登場、さらに前巻で登場した模造人格、全く異質の情報生命体、とでも呼ぶべき存在と、その存在たちの影響で三原則に縛られない存在のロボット、なんてものまで関わってきて、ロボット側の変化というか進化の部分はかなり興味深く読める。"ロボットの魂"の物語として、このお話、かなり興味深い訳ですよ。人類がロボットというものをある程度拒否してしまったことで、「ロボット工学三原則」がなんの改訂も加えられないまま2万年近い時が流れた世界、その中でその存在を隠しながら、長い時を経て進化してきたロボットたちの人類に対するありようを描いた作品として、これはちょっといい話。あまりにも長い時を三原則の制限の中で、それでも進化を遂げてきたロボットたち、と言う存在には一抹の哀愁を感じてしまいますわ。
そこはいいんだけど、あれですなあ。ロボットたちですらこれだけの進化を遂げているというのに、人間の方は1万年経っても2万年経っても、これは、と言えるような進化を遂げていないのが少々哀しいですな。
(★★★☆)
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