ばむばんか惰隠洞

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2004-08-22 [長年日記]

[Chinema] 「サンダーバード」ってどういうもの?

ええと、ityouさんのツッコミを受ける形で、「サンダーバード」ってどういうものなのか、を改めて考えてみた。

まず個人的に、自分が「サンダーバード」ってこういうものを強く意識した時期というのは3回あって、1回目は1966年のテレビ放映時。NHK、日曜夜6:00がこれぐらいワクワクした時期はなかったね。で、次が1990年のLDボックス発売時。このときには繰り返して見れることから、子供の時の「わーすげー」から一歩進んで、お話の構成とか世界観とか、そういうものをいろいろ考えさせてもらえた時期。で、3回目はこの前の映画を見た時、というかあの映画が製作されてる、というアナウンスを聞いたあたり、かな。ま、3回目はあれです、「いろいろあるけどオレは『サンダーバード』好きでたまらんのだなあ」を再認識した、って程度ではありますが。

さて。

「サンダーバードってどんなもの」てのにはそういうわけで2段階ありまして。1段階目はガキの頃に見た、問答無用の高揚感を味あわせてくれる映像、という部分。2段階目はその陰にしっかり息づいている英国の香り、と申せますか。問答無用の高揚感、てのは、先日映画の感想でも書きましたけど、メカデザインのセンス、メカニクス描写におけるプロセスの緻密さ、そして映像的なメリハリのうまさ、ということに尽きます。例えば「ウルトラマン」の興味が「次はどんな怪獣が出てくるのだろう」であるのと同様に、「サンダーバード」における興味の対象というのは、「次はどんなメカがピンチに陥るのだろう」という部分に尽きるわけです。当然、ピンチに陥るメカたちも、はるかに進んだ科学の産物じゃないといけない。オイルリグなら、すべての作業が完全自動化され、作業員は3人で充分、とかそういう感じ。「科学の進歩は、人類にとって予想もしない危険をもたらすこともある。でも、それを解決するのもやっぱり科学の力だ」というのが「サンダーバード」の基本的なメッセージだと思ってるわけで、見たこともない新技術とそのピンチ、てのが当時のおこちゃまを釘付けにした理由だと思っています。

特権意識をひけらかす訳じゃないですけど、1回目の本放送をリアルタイムで見てた人じゃないと、ここの高揚感はずいぶん違ったものになるのだろうな、という気はしています。30数年前の日本の田舎の風景と、テレビの中に展開する未来社会のギャップの大きさ、「こんな世界が造れるんだ」という憧れ、その憧れの対象が、些細なことでピンチに陥ってしまう驚き、そしてそこに颯爽と駆けつける謎のスーパーメカ。1966年当時、私は7歳でしたけど、今私が7歳で、1966年の「サンダーバード」を初めて見たとして、あのときの高揚感というのは間違いなく感じないだろう、と思います。現実と空想の差が狭まっているんですね。であれば、今同じ名前の映画を作ろうとしているスタッフは、1966年のガキんちょが食らった空想の力に匹敵する新しいビジュアルを作りだし、それを観客に「さあどうだ、こんなの見たことあるかい?」と叩きつけなくちゃいけない。驚きの映像のない「サンダーバード」なんて、「サンダーバード」じゃないです。

んで2段階目、世界観としての「サンダーバード」。

これはあれです、「サンダーバード」ってのは良くも悪くも、実に英国風なお話だと言うこと。私は英国人というのは、高慢で鼻持ちならなくて、歪んだユーモア感覚に富み、権威とか権力とか組織とかを徹底的に信用せず、逆境にならないとやる気を出さない国民、であると思ってるんですが、「サンダーバード」にもそういう香りがぷんぷんとしてて嬉しくなって来ちゃいます。これは子供の頃にはわからないけど、ちょっと大人になって見直してみてわかったこと。ityouさんはご自分のコンテンツで、ウェイン町山氏がトレーシー一家にケネディ一族のイメージが見て取れる、と書いておられたという話を紹介されてたけど、で、セールストーク的にそれはおいしいので、ITCの連中も対外的にはそういうふりをして見せたかも知れないけど、JFKのおとっつあんであるパトリック・ケネディはとんでもない右翼タカ派野郎なのは有名な話な訳で、それを少々揶揄する気持ちをこめてカリカチュアライズして出来上がったのがジェフとーさんだった、といえば言えるかも知れない。ちょっと脱線したか。脱線ついでに言うなら、トレーシー一家って、ケネディっちゅうよりロックフェラー一族のような気がしないでもない(w。

話を戻して。

ityouさんはTVシリーズをご覧になったことがないそうですが、実は「サンダーバード」、結構殺伐とした話が多かったりします。悪の秘密結社と見るやスコット兄さんは問答無用で発砲したりする(武装してるんだよ、国際救助隊は)し、最後まで悪党の正体が今ひとつ見えない話があったりするし、映画版「サンダーバード6号」では殺害された最新鋭飛行船の乗員たちが、洋上にぽろぽろと放り投げられてるシーンがしっかり映し出されたりしてるし。お話としても、たとえば親子の愛情とか、兄弟間の信頼とか、いくらでも書こうと思えば書ける設定ができているのに、そういう話は驚くほど少ないです、というか、無いんじゃないかな。家族の絆、とか言うこと以前に、「国際救助隊」という組織が前に来てしまっているんですね。そこにはひねたユーモアは散見されるけど、しみじみと涙腺が刺激されるような家族愛、なんてものは全然入り込みません。

「サンダーバード」に限らず、ITC作品ってのは基本的に、組織ってものを、血の通わない、胡散臭いものとして書く傾向が強いように思います。次の「キャプテンスカーレット」もそうだし、「ジョー90」もそういうとこあるし、極めつけの「プリズナーNo.6」なんてのもあるし。なのでityouさんのコンテンツから引くならば、ジェフとーさんが「結局俺には、お前達だけか」なんて言うわけ無いんですよ。子供たちが離れていったら、ジェフとーさんは眉一つ動かさずにFABあたりに電話して、「やあ、実は欠員ができてしまったんだが…」っていうに違いないんです。わはは。

このあたりの、妙に醒めたタッチ、というのがITCの一連のシリーズの大きな持ち味だと思うんですけどね。非人間的な部分に猛烈に情感を込める反面、人間そのものに対しては深入りしない、という部分。せっかく格好良い宇宙船を用意しながら、それをほとんど活躍させないアメリカの大人気TVシリーズとは対照的ですね(^^;)。その、対照的なシリーズの準主役がメガホンを取ってできたのが今回の映画、てのはなんだか皮肉な気がします。「サンダーバード」って、実はびっくりするぐらい乾いた世界なんです。浪花節は「サンダーバード」には似合いません。

ついでに、私、かなり確信してるんですが、トレーシー家の人々は、世界の平和なんかにはこれっぽっちも興味を持っていない連中だと思ってます。彼らにとって重要なのは、自分らにしかできない救助活動をやること。悪辣な独裁国家で起きた半ば以上人災の災害なんて、サンダーバードのスーパーメカの出番が無いじゃないですか。そもそも世界の平和なんてものは、原色の全身タイツにマントでも羽織ったような連中に任せておけばいいんです(w。基本的にサンダーバードが対抗しなくちゃいけないのは、自分たちと同等か、それ以上の科学技術が引き起こした災害なわけで、そのために5号は宇宙から「何かいい事件起きてないかなー」と各国の通信をモニターしてるわけで。サンダーバードは自分で事件を選ぶんですよ。大統領から電話もらって、へこへこと仕事に行くような連中じゃあないんです。なんて高慢で鼻持ちならない連中なんでしょうねえ。そこが好きさ(歪んどるなあ)。

と、いうことで。

一大国際組織となった国際救助隊という存在、その中で高らかに歌い上げられる家族愛、の二点に於いて、私は「『サンダーバード』ってそういうもんじゃないんだけどなー」と思っちゃうわけです。組織というものを胡散臭いと見る国民性から産み出されたヒーローが、政治的に中立な国際組織という思想なんてものに縛られてしまった瞬間に、それは私の中では「サンダーバード」じゃ無くなってしまっている、ということで。ついでに、救助隊が立ち向かうべき、「科学文明が産み出した脅威」がないってあたりも併せて。これは今回の映画版でもそうでしたけどね。

なので、例えば………

20XX年、アメリカはかつての9・11自爆テロで更地となったWTC跡に、一大モニュメントを完成させようとしていた。だがそれは単なる記念碑ではなく、全米の産軍共同体の総力を結集した一大早期警戒システムの根幹をなす設備であった。最新兵器で厳重に防御され、全世界のあらゆるニュース報道、ネットワークを流れる情報などをすべて取り込み、誰よりも速くアメリカに害をなそうとするものを予測し、同時に全世界の米軍に大統領命令級の指令を送る権限を持つ超コンピュータ。だがそれは稼働と同時に、あろう事かアメリカ最大の敵をアメリカであると判断、米軍の約半数をその勢力下に置いてアメリカへの攻撃命令を発してしまう。必死でモニュメントを破壊しようとするアメリカとその友好国、だが自らが建造したそのモニュメントの防備と戦力は完璧。あらゆる攻撃を跳ね返しつつモニュメントはニューヨークを焦土に変えていく。アメリカ全土に破滅の予感が漂うそのころ、NORADの早期警戒網を易々と突破してマンハッタンに向かう一つの銀色の機体があった………。

なんてなお話だったら私、それなりに燃えたかも知れません。つかあれだ、かろうじてコンピュータの支配を逃れ、人間側で戦うアメリカ軍艦に「センチネル号」がいたら、真っ赤に燃えそうです、私(笑)。

文中の引用は、ityouさんのはてなダイアリー/指輪世界の第二日記・サンダーバード/シークエンスの密度の埋め方より引かせていただきました。

[Chinema] 「サンダーバード」ってどういうもの? 2

まあなんだな、ワシがへらへらと垂れ流した文章よりも、たおさんが書いておられる内容にじっくり目を通していただいた方がよっぽどためになるような気がしないでもない。たおさんのmemo、8/218/22を乞御一読。モノが「サンダーバード」になると、私しばしば怒りで我を忘れる傾向があるので、たおさんみたいにきっちり時系列に沿って、なんであの映画がスカなのかを追っていく文章はありがたい。読み応え、あります。

[TV] 定期視聴番組

高校野球やらオリンピックやらの影響で、今週は「特捜戦隊デカレンジャー」、「仮面ライダーブレイド」、「ふたりはプリキュア」の三本。一週遅れの番組が多いかな。「デカレンジャー」はテツ君視点で見直すジャスミンの魅力編(#27 「ファンキー・プリズナー」)。残念ながらウメコ編やホージー君編ほどには、テツ君からみてジャスミンの魅力再確認、とまでは行かなかった感じかな。ジャスミンの魅力は感じるけど、それを見るテツ君のほうのリアクションがちょっと不足だったかな、なんて。

「ブレイド」(#29「2人のカリス」)は井上脚本、以上終わり(^^;)。いやまあそろそろ夏のコメディ編、が来るのは、それはそれで良いんだけど、外すなら思い切り外す方が良かったんではないのか。外しつつ本編にも重要な影響を与えるシークエンスをここで盛り込む、というある意味野心的な展開を持ってくるには、脚本家の力量に不安が残るじゃろう、と思ってしまうわけなんだが、まあ予想通りの展開ではあるわいな。とりあえずあれです、井上敏樹が脚本を書く時には、食い物の話は前もって禁止しておくべきだと思います、いやマジで。

さて日曜日のNHKも割と真面目に見てはいるんですが、とうとう山南さんも亡くなってしまいましたなあ、NHK的には芹沢暗殺以上に気合入ってましたなあ、次は平助君ですなあ。そんなことより「名探偵ポワロとマープル」のポワロさんが日に日に黄門様にしか見えてこなくて私、少し困ってるんですけど。いまにもポワロさんが「よろしかったらこの年寄りに、お話を聞かせてくださりませんかな」とか言い出しそうでさあ。

本日のツッコミ(全10件) [ツッコミを入れる]
ks1234_1234 (2004-08-22 15:41)

長文、堪能しました。いやあ、よかった。愛が滲み出てます。アメリカvsアメリカのエピソード、どこかに売り込みたいくらいですわ。

rover (2004-08-22 18:09)

なげーよオレ(^^;)。

taoy (2004-08-22 20:40)

あー、そうそう。サンダーバードってジェフの道楽なんですよね。使命感とかじゃなくて。

noki (2004-08-23 00:50)

あー。今日の話って井上脚本か。。なるほど。<br> しかし、、ITCものってほんとに組織っってものに対して胡散臭い<br>ものだという見方があって「UFO」もそうだしなぁと、、しかし<br>トレーシー家ってつくづく金持ちなんだよなぁ。。。

rover (2004-08-23 09:41)

今ふと思ったんだけど、ジェフとーさんの仕事は土建屋なんで、各地で災害が起きるたびにトレーシー建設はウハウハなんじゃないかなあ。実は毎週起こる災害こそが救助隊の財源だったりして(な、なんだってー)

ityou (2004-08-27 14:14)

面白い! 乾ききった人情紙吹雪独善野郎供、ですか…… ありがとうございました。

rover (2004-08-27 21:52)

ま、矛盾すんだけど、たとえウェットな話であったとしても、どっかーん!もりもりもり!があったらそれはそれで許してたかも知れないんですけどね、今回の映画も(^^;)。<br>思い入れが過度なので、サンダーバードについて語るのは難しいなあ、と改めて思いました。

りつこ(旧ねね子) (2004-08-30 23:45)

今更こんなネタでスミマセン(^^;)<br>V6が声を充てると発表された段階ではジョンが長男でスコットが次男になっていました。よって年功序列で<br>(当時)32歳 リーダー坂本→ジェフ父ちゃん<br>    31歳 長野→ジョン<br>    27歳 井ノ原→スコット<br>とキャスティングされました。<br>日本語版テーマソングのCDジャケはメカに合わせて5種類デザインされていたので急遽長野博は五号機になったたのですが、CD宣伝ポスターは間に合わなかったらしく長野博が一号機に手書きで×が書かれ「5」と書き直されていたのが哀れを誘います(--;)<br>米国で誤植があったようなのですが、その内容に何の疑問も持たずに日本のスタッフも動いちゃったらしいです。<br>ちゃんと仕事しなさいよと言いたいですわ。

りつこ(旧ねね子) (2004-08-30 23:55)

投稿して読み返してみると凄く読みにくい文章なのが分かります。<br>ごめんなさい(--;)<br>つまり大元の原因は米国側の手違い、間違いなのですが、何の確認もしなけりゃ疑問も持たなかった日本にも原因がある訳で、どっちも良い仕事をしていないと言いたかったのです。はい。

rover (2004-08-31 12:56)

ぬう、つまりハリウッドにもV6のスタッフの皆さんの中にも、サンダーバードヲタは一人もいなかったという事なのねー。普通おらんか。


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