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2006-08-24 [長年日記]

[Books] メモリー ヴォルコシガン・サガ (23:33)

メモリー 上(Bujold,LoisMcMaster/著 小木曽絢子/翻訳 ビジョルドロイス・マクマスター/著)メモリー 下(Bujold,LoisMcMaster/著 小木曽絢子/翻訳 ビジョルドロイス・マクマスター/著) ロイス・マクスター・ビジョルド 著/小木曽絢子 訳
カバーイラスト 浅田隆
カバーデザイン 矢島高光
創元SF文庫
ISBN4-488-69812-3 \980(税別)
ISBN4-488-69813-1 \940(税別)

三十にして立つ

手練れ揃いのデンダリィ傭兵隊にとって、それ程困難な任務でもないはずだった。ハイジャッカーに囚われたヴォルの救出任務。だが何かが狂った。かつてのミッションで一度命を失い、そこから蘇生したネイスミス提督ことマイルズ・ヴォルコシガンには深刻な後遺症が残っていたのだ。その後遺症によってマイルズを襲う発作が、ミッションに少なからぬ影響を与え、マイルズ自身からもいつもの知性と判断力を少しばかり奪うことになってしまった。もちろんバラヤー機密保安庁長官、シモン・イリヤンがその不自然さを見逃すはずはない。やや"やりすぎた"マイルズは、そのツケを負って緩やかな謹慎状態に追い込まれ悶々とする羽目に。だが、真に重大な事件はそのあとに起きていたのだ。超絶的な記憶力を誇ったイリヤン長官の身に何かが起こっている…。

久々のヴォルコシガン・シリーズ。とっくに訳は完了していたのだが、諸般の事情でなかなか出版されないでいたという事らしい。本国での刊行が1996年、10年のタイムラグってのは、確かに最近のSFとしては少々間が開きすぎではあるが、このシリーズが好きな人だったらこれまでのお話は何となく覚えているだろうし、実際読み進んで行くにつれて、あああんなこともあったこんな人がいた、とあちこち(これがまたふんだんに用意されている)で懐かしい気分に浸ることができ、そして終盤にきて「ええ、そうしちゃうのかい」と、少しばかりの驚きと寂しさを味わい、それからタイトルに込められた"意味"を再認識して、ううむと唸ってしまうような造りになっておる。ううむと唸ってしまうのは、小説の主人公に、読んでるこちら(少なくともオレは)が追い越されてしまった、と感じるから。

とある事情で、生まれながらに様々のハンデを負っている主人公マイルズが、そのハンデをものともせず、自らの才覚でかなりのスパルタ国家であるバラヤーでその地位を確立していく過程というのは、サクセスストーリィとして実に面白く、楽しんで読んでいける。母国であればたとえハンデがあるにしても一種の貴族階級である"ヴォル"でいられるマイルズだが、本人がそれを潔しとせず、地力でバラヤー皇帝にも一目置かれる存在になっていく過程、が時にユーモア、時にペーソスを交えて語られるここまでの本シリーズ、「頑張れマイルズー」ってな気分で毎回楽しんできたわけだけどここに来て、小説の登場人物の方から、「いつまでもオレは君が期待してるマイルズやってる訳にはいかないんだよ」と宣言されちゃったような、軽いショックを感じたのでありました。

SF的になんか凄いことをやってる訳じゃない。SFミステリ仕立てになってはいるが、効果的なレッドヘリングが存在しないこともあり、案外ミステリとしての底も浅い(下手人はヤツ以外にいないのであって、それをどうあぶり出すかに主眼が置かれている、とも言える訳だが)んだが、小説の主人公が読み手の予想を遥かに超えて新たな地平を開こうと決意する、そのための準備としてタイトル通りこれまでの様々なメモリーが去就する、ってあたりの描写に最近どっぷりモラトリアムなオジサン、思わず唸ってしまった訳でした。ラストのビタースイートな味わいも大変結構。いやはや、これは結構なものを読ませていただいた。SFとしてはどうか云々以前に、物語として圧倒的に成立しとるよね、これ。

"ヴォル"のシリーズを何冊か読んでる読んでる人なら、文句なしに楽しめる一冊(ああ、二冊か)なのじゃないだろうか。そうじゃない人はそうだなあ、「戦士志願」、「無限の境界」、「ミラーダンス」と「親愛なるクローン」ぐらいは前もって押さえておいた方が良いかもしれません。軽石庵には「戦士志願」は2冊在庫がございます。amazonより高くてごめんな(^^;)。ウチにはないんだけど実は「無限の境界」は読んどくと、本書読んだときのしみじみ感がかなり違うかも、と言う気はしますです。

戦士志願(小木曽絢子/翻訳 ビジョルドロイス・マクマスター/著)無限の境界(Bujold,LoisMcMaster/著 小木曽絢子/翻訳 ビジョルドロイス・マクマスター/著)天空の遺産(小木曽絢子/翻訳 BujoldLouisMcMaster/著 ビジョルドロイス・マクマスター/著)親愛なるクローン(小木曽絢子/翻訳 ビジョルドロイス・マクマスター/著)ミラー・ダンス 上(Bujold,LoisMcMaster/著 小木曽絢子/翻訳 ビジョルドロイス・マクマスター/著)ミラー・ダンス 下(Bujold,LoisMcMaster/著 小木曽絢子/翻訳 ビジョルドロイス・マクマスター/著)

一応"ヴォル"ものからマイルズの正史っぽいものを。中編集「無限の境界」は、かなり傑作っぽかったような記憶が(ぉぃぉぃ)。

(★★★★)


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