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アレステア・レナルズ 著/中原尚哉 訳
カバーイラスト 鷲尾直広
カバーデザイン 岩郷重力 + WONDER WORKZ.
ハヤカワ文庫SF
ISBN4-15-0115710-0 \1440(税別)
人間的に問題もあるかも知れないが、おおむね公正な雇い主だった。だが彼とその愛妻は、自業自得と言えなくもない理由で一人の敵対者によって殺害されてしまう。彼の信頼を得て身辺警護の職に就き、自らも重傷を負いながら生き延びたおれ、タナーは殺害者、レイビッチへの復讐を誓って行動を開始する。だが敵もさるもの、こちらの行動はすでに見透かされ、対抗手段によって再びタナーは重傷を負い、コールドスリープ状態のまま母星を離れた宇宙船に隔離される羽目に。再び目覚めたタナーが知ったこと、それはめざす相手が惑星イエローストーンの悪名も高いカズムシティに逃げ込んだらしいと言うこと。かつては全宇宙を通じても屈指の楽園と言われたカズムシティ、だが今、そこは7年前の謎の"融合疫"の影響で、想像を絶する怪異な世界へと変貌していたのだ…。
前作「啓示空間」を上回るクソ分厚さ。ここまで来ると何よりもまず、読み始めるまでに多大な決意が必要となるような本。だって厚さ5センチですもの。Ⅲ号戦車なら主砲だぞ(w。
というわけで「しかたない、んじゃあ読んでみるか」って気になるまでにちょっと時間が必要だったわけなんだけど、読み始まったらおいおいおいおいなんてこったい、面白いじゃないか。1120ページ、ほぼ最初から最後まで退屈しないで読んでいける。前作はその自らの重厚長大さに自分自身が耐えきれずに、まるで本書の序盤の見せ場である軌道エレベーターの事故のようにあちこちでラインがプチプチ綻び、切れてはね回ってしまってるようなまとまりのなさを感じてしまったのだが、二作目の本書で著者レナルズさん、なにか小説を書く上でのキモみたいなものをがっつり掴んじゃったんじゃないかって気がする。様々な小ネタ、大ネタ、いろんなヒキが錯綜し、 その全てにちゃんと説明と落ちが付く。ほぼ満点(ラストにちょっと不満あり、なんです)、と言っていい構成なんではないか、小説としては。
SFとしてはどうかって事になると、こっちはやや手薄かも知れない。いろんな小物アイデアががんがんぶち込まれててああもったいない、って気もするし、終盤にぶち込まれる"銀河最終ほにゃらら"ってアイデアに至っては、よーく考えると5秒ぐらい口開きっぱなしになりそうなものなんだけど、そこら辺のSF的な「ここ、凄いんですよ、ちゃんと読んでくださいね」な描き込みは案外控えめで、むしろミステリ的に「ああ、あれはそういう風に繋がるのか」的な、いろんなピースがぱちぱちハマっていく気持ちよさ、みたいなものを重視した造りになっているように思う。なのでこのクソ分厚さにも関わらす、ページをめくるのが楽しい本になっている。実際私、最初の方はちょこちょこ読んではまた明日、って感じで進んでたんですけど、真ん中あたりからもう面白くなっちゃって、一気に後ろ半分は読み切っちゃいました。上手い具合にSFとミステリのおいしいところをくっつけた本、って感じかな。
なんでも訳者、中原さんのあとがきによるとこの作品、最初に著者が書き上げたのはこの半分ぐらいの分量で、それではセールス的に弱いという編集側の意向で、追加の要素が加わってこのクソ分厚い本になったものらしい。中原さんも書いておられるけど、どこら辺が追加パートなのかは何となく分かる。で、実はこの追加されたパートがこの本をでたらめに面白くしている最重要要素であり、同時にラストに妙に、これじゃあ全部はちゃんと収まってないんじゃないの? って不満を残してしまう原因にもなってしまっているような気がするな。追加パートが無ければこのラスト、そんなに悪くないものであったような気がするんだが、追加パート側のお話との関係性(これがどうして、軽視できない)を考えるともう一声、つっこんで欲しかったような気はする。正直最終章とエピローグでちょっとだけ、背中にお水を2.3滴、ぽとりと落とされたような気はしてしまった。ここまでやってくれてるんだから、って気分とここまでやってくれたんならもう一声、が錯綜しちゃうわけですな。そこはちょっと惜しい。
ラス前数ページまでは文句なしに楽しめた。オーラスでもう一声、大きい手を期待したのに三位確定の下家が場を見ねえでタンヤオのみで上がって半荘終了、みたいなもったいなさは感じちゃったかも。んでもこれはかなり面白いです。SFファンの夏休み課題図書の一冊の資格はあるんじゃないかな。
(★★★★)
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素直に上下巻に分けてくれたら買うのになぁ……ぶあつくしたほうが儲かるのかなぁ。真ん中でひっちゃぶいちゃおうかなぁ。
そうかと思えば一冊で充分まとまるものを、無意味に上下分冊にしてるような本もありますしねえ。