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今年はカミさんが自分用の電気ストーブに火を入れないなー、我慢強いなーと思ってたらなんのことはない、ストーブ壊れちゃってたのね。
言えよ。
ってことでTRちゃんからの入金もあった事だし、カミさん用の暖房器具を買いに出た。何冊か買いそびれた本もあったので、それも補充する目的で。
文庫を数冊買い足して、カミさん用には小ぶりのセラミックファンヒータをひとつ買って、あとは立ち呑みでヌル澗ぐびり。これで今年の外回りは終了、かな。今日の立ち呑みスタッフさんは初顔だったせいか、ヌル澗の「ヌル」の部分がオレの好みより少し温度低めだったのが淋しかったです(^^;。
ロバート・B・パーカー 著/加賀山卓朗 訳
カバーデザイン トサカデザイン(戸倉巌・小酒保子)
ハヤカワ文庫HM
ISBN978-4-15-178655-6 \880(税別)
夫を代えるたびに裕福になっていく社交界の花、ハイディ。彼女がスペンサーの許に持ち込んだ依頼は少しばかり風変わりなものだった。近く行われる娘の結婚式で、ハイディ個人のボディガード的な立ち位置にいて欲しい、と言うのだ。夫の持つ小島で行われる結婚式には、もちろん正規の警備チームも配備されているのだが、それとは別に、個人的な不安を解消するために、と言うなんとも曖昧な理由ではあったのだが、依頼を請けたスペンサーはスーザンと共に孤島へと赴くのだが、そこでは驚くべき出会いが待っていた。かつてスペンサーを死の淵まで追い込んだ「灰色の男」ルーガーもまた、結婚式の参列者として来島していたのだ…
おそらくスペンサー・シリーズにおいて最強の敵役であろう灰色の男、ルーガー三度目の登場。ここまでは何か掴み所のない、少々不気味な人間というイメージだったルーガーだが、本書では自分の能力とスペンサーの実力を正しく認識し、あくまでプロとしての礼節をわきまえて接する、それなりに紳士的な人物として描かれている。とはいえこの人がやってきて、「やあ久しぶり、じゃ」で話が済むわけはなく、結婚式の真っ最中に花嫁を誘拐し、まんまと島から姿を消してしまう、と言うのが話の発端と言うことになる。
で、ここからスペンサーと愉快な仲間達がいつものように無駄口を盛大に叩きながらの捜査、という流れなわけだけど、ここはもういつものスペンサー、と言えばまあ、読んでる人はみんな判るよね、的な展開になっている。捜査の間で語られるテーマ自体は、前作が一種の結婚論であったとしたら、今回で語られるそれは、「自制」というか「己を律する、とはどういうことか」みたいなものであると言えるだろうか。最終的にスペンサー側(善悪入り乱れてはいるけれど)の人々というのは、彼らなりのスタイルで自制を効かせることの出来る人々である一方で、スペンサー達が事件において出会う人々というのは皆どこかで自制できない人たち、という対比が提示されている、といえるか。そこの所の表現はまあ、「スペンサー」なのでね。どこか突き放したものになっていて、そこのところを受け入れられるかどうかで読後感は変わってくるのかも。
スペンサー達のスタンスというのは、最終的に「でも人のことは分らないからね、オレらはこうするけど」なので、その範囲において彼らの行動には一本芯は通っているとも言えるので、これはこれでアリだとは思うけど、同じ理由でこいつら誰にも影響を与えていないじゃないか、と言う不満を持つ人もいるかも知れないな。
そんな中、スペンサー達とは相容れない、全く異なる価値観で動いてはいるがそれでも彼なりに「自制」は貫いている「灰色の男」がお話にどう影響を与えるのか、ってところにちょっと興味が湧くんだが、残念ながらそちらの描き込みは少々物足りなかったかも。いろんな理由で本書における「灰色の男」は、あまりその存在を前面に押し立てにくい立ち位置にあるって事もあるとは思うのだが、対比、と言う意味において異物としての「灰色の男」の表現にもうちょっと深みが欲しかったなあと言う気はしないでもない。
ただ、そんな「灰色の男」が、今回はスペンサーものとしては最大級のトゥイストの起点になってなってたりしたあたりは、悔しいけれど星半分ぐらいはオマケせざるを得ない気分だ。スペンサーで「え!?」などと思うのは、めったにないことだからね(^^;。
★★★
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