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2005-08-27 [長年日記]

[Books] 老ヴォールの惑星 (23:47)

老ヴォールの惑星(小川一水/著) 小川一水 著
カバーイラスト 撫荒武吉
カバーデザイン 岩郷重力 + WODER WORKZ。
ハヤカワ文庫JA
ISBN4-15-030809-8 \720(税別)

amazonで購入

回り回って懐かしさ全開

手渡されたのは一枚の地図だけだった。水場の印と餌場の印だけが記された、取るに足らない地図。だがそれこそが、この迷宮で生きていく上で何よりも重要なアイテムだったのだ。政治犯たちが収容され、孤独で過酷な生存のための戦いが繰り広げられる謎の迷宮。そこは発明者の名を取って"ギャルナフカの迷宮"と呼ばれていた…。

小川一水初の中編集。「ギャルナフカの迷宮」、「老ヴォールの惑星」他、全4作品を収録。

小川一水というと自動的に「またガテンSFなのかな?」なんて勝手に思いこんでしまうのだけれど、今回の作品集はガテン風味は薄めで、そのかわりになんというのかな、懐かしいSFを読んでいる気分を満喫させてもらった。まずは各作品の短い感想を。

ギャルナフカの迷宮
そう(どう?)はいっても小川一水。やはりフィールドのルール作りはおろそかにしない。続々と送り込まれる政治犯たちを収容する"迷宮"の設定が魅力的。縛りのある世界で社会性から隔離された大量の人間たちの間にコミュニケーションは確立されるのか、新たな社会性は構築されるのか、をテーマに描かれるこの物語は、ふむ、わたくし的には実に小川一水的スタイルの作品と見えた。刑期の不明確な監獄がその刑期を明らかにしたときのショックが心地よく、期せずして二つの"社会"が衝突することになる、というラストも、少々青臭いとは思うが私好み。
老ヴォールの惑星
こちらはぐっとハードSF風味。立ち位置が逆転した「重力の使命」か「竜の卵」か、というノリで。この異星人たちの生き物としての特異さ、面白さが読むだけですんなり頭に入ってくる人には、たまらない知的遊戯が楽しめる一作であろう。ワタシは頭悪いので残念ながら一読即膝をぽん、とはいかなかったんだけど。個人的にはラストにちょっと異議あり、かな。
幸せになる箱庭
一瞬「太陽の簒奪者」あたりとイメージが被ってしまったが、これはむしろ「リングワールド」なのかなあ。「幸運の遺伝子」のかわりに謎な構造物を旅する主人公たちの上にあったモノは…、みたいな。本書のなかでは一番"今風"な設定の作品といえるか。ただこれも、どこかに懐かしさを引きずっている。絶対的な超越者と普通の人間との丁々発止、なんてあたりは、なんかこう山田正紀あたりの初期の作品を思い出してしまうなあ。
漂った男
ちょいブラックユーモア風味のユニークな中編。シチュエーション・コメディとしても秀逸なんだけど、最後になにかこう、前向きな気持ちを失わないで話を終らせる、ってあたりが小川一水的矜持って事なんだろうか。「ギャルナフカの迷宮」同様、ワタシはこういう青さは結構好きですよ。

というわけで、古くさい、などとは決して思わないのだけれども、何かこう、どこかに少々青臭い懐かしさのようなものを感じて、何よりそこが好印象。というかどういう訳だか最近のJA、こういう読後感を持つことが多い気がするのはどうしたことだろう。小林泰三しかり、飛浩隆、しかり。青二才だったワタシがSFを読み始めた頃のSFの雰囲気というか、んーなんだろ、塩加減みたいなもの? それを最近のJAでちょくちょく味あわせてもらっているような気がする。ワタシが日本SF、でイメージするモノって、おおむね1980年代以前のSF、って事になる(言っちゃいますよ、火浦功とか大場惑とか野阿梓(は、それほど嫌いでもないな)とか東野司とか大原まり子とか水見稜とか岬兄悟とかが出てくる以前の日本SF、です)のだけど、そのころのSFが持っていたテイストみたいなモノを、なぜか最近の日本製SFからはしばしば感じることがあるのだけれど、これはどういうんだろう。80年代のおかしなSFバブルで酔っ払ったSF者たちがここに来て正気に返ったと言うことなのかしら。だったらワタシは大歓迎なんですけど、実際のところはどうなんだろう。いずれにせよ日本SFって、いまだに独自のスタイルが見いだせていないってことの証左、なのかもわからんなあ。

ま、そこらも含め、いろんな意味で小川一水の今後には期待したいと思ってます、ええ。そんな期待感を裏切らない一冊ではありました。

(★★★☆)

大野万紀氏作者には邪悪さが足りませんと書いてらっしゃった。確かになあ。ま、大野氏自身も認めてらっしゃる様に、それが小川一水の魅力なんだろうけどさ。

[TV] 定期視聴番組 (24:48)

「ウルトラマンマックス」、「種デス」、「ツバサ・クロニクル」。「マックス」(#9:「龍の恋人」伝説怪龍ナツノメリュウ登場)はまあ、納涼夏祭りテイスト、もしかして「ノンマルトの使者」もちょっと踏まえてみました、なエピソード?。ナツノメリュウがここまでどないに苦しい思いをしていたのか、ってあたりの描き込みが少々甘いと思えたのと、肝心の竜の使いの女の子に、微妙に魅力が足りなかったのが惜しかったかな。イモっぽいのだがどこかでハッとする、ような少女を求めるところなのだが、最後までイモっぽかったのがちょっと。私の好みの問題なのかも知れないけど、もちっと首の細い女の子を使って欲しかった。

デス様は、この暗黒スタッフなら今週でレイの策略喰らってルナマリアもレクイエムと差し違えで死亡、をちょっぴり期待してたんだけどさすがにそこまでは行かなかったか。まあこんなモンだろうと思うけど、ジブリールさんはかなり頭悪いキャラに見えてしまうね。


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