カテゴリ一覧
Anime | AV | Baseball | Books | CGI | Chinema | Comics | CS | Day | DVD | Event | F1 | Games | Hobby | HTML | Kindle | Misc | mixi | News | Oldbooks | PC | Photo | SpFX | Stage | tDiary | Tour | TV | web | 逸級介護士
エリック・ガルシア 著/酒井昭伸 訳
カバーイラスト 桔川伸
ヴィレッジブックス
ISBN4-7897-2623-1 \980(税別)
amazonで購入
あまりタチの良くない知り合いにパーティーに呼ばれ、出かけた先がLA裏社会のボスの家だった、というのはちょっとマズい状況だ。タチの良くない知り合いがそのボスの手下だとわかる、というのはかなりマズい状況だ。そしてそのボスが、最初からこの俺に用があったらしい、とわかるというのは……最悪だ。
そんなわけで、人間たちの間で正体を隠し、私立探偵として生きる俺、ラプトルのヴィンセント・ルビオは今、マイアミに来ているのだった。LAのギャングの大立者、フランクから請け負った仕事は、敵対するファミリーの患部の尾行。だがそのターゲットは予想より速く自分の本拠に戻ってしまった。そこで仕事が終らないのが辛いところ。俺もマイアミまで出向き、フランクの弟、エディの元に身を寄せて尾行の続きをやっている。だが、なんだかこの仕事、どうにも底の知れないところが……。
恐竜ハードボイルド第三弾。時系列的には一作目の「さらば、愛しき鉤爪」からしばらく経ったあたり。アル中ならぬバジル中毒に苦しみつつ、新たな、そしてなにやら裏にずいぶんキナ臭い匂いのしている仕事に就くのだが…、ってなお話。解説にもあるとおり、タイトルの元ネタはダシェール・ハメットの「血の収穫」、ということはつまりとりもなおさず黒澤明、「用心棒」にも一脈通じるお話、なんて書いてしまったらこれからお話を読もうと思ってる人の興味を著しく削いでしまうことになるかしら。でも書いちゃったわ。ごめんなさい。
さて、われらが桑畑三十郎は、よれよれの野良犬ではあっても野良犬なりの誇りは失わない人物なんだが、なんせルビオは人間じゃないので、よれよれの恐竜で、かつなかなかぴしっとしたところを前に出せない人物(竜物?)なのはこのシリーズをお読みの諸兄なら先刻ご承知。そんなルビオがよたよたと事件の核心に迫っていき、最期に少しばかりの哀しみをかみしめつつ一つの事件が解決する、というのがこのシリーズのフォーマットであると思うのだが、どうでしょう、前二作の好評で気が大きくなったのか、エリック・ガルシアは本作で「書きすぎる」という致命的なミスをやらかしちゃったような気がする。
本書の構成は、まず導入部でちょっとした事件が起き、その事件が一段落したところで、ルビオが「なんでオレはこんなこと」とその事件が始まる元になる、発端のエピソードを回想する、という構成を取っている。良くあるパターンですね。だが、この回想がどう見ても度を超して長い、と思ってしまう。読んでるうちに、自分が読んでるそれが回想であることを忘れちゃうくらい。そしてようやく本筋に戻ってきた(ここまでで本は3割ぐらい読み進んでる)と思ったらすぐにまた回想シーン。今度はそれほど長くはないけど、だからといって短くもない。とにかく本筋を追うのに苦労するぐらい長い(そしてやや冗長な)回想シーンが挟まってしまうのだな。これは構成として何か間違ってる気がする。
そんな構成の壊れた部分を、訳者の酒井さんもマズいと思ったのか(どうかはわかりませんが)、本書の訳のはっちゃけぶりも前作以上な気がする。なんというか、こっちの許容範囲を超えているというか。
わたしねえ、「本」を開いたときにweb言葉が出てくるの、すごくイヤなんですよ。この本で言うと、まあwebではよく使われる「〜〜ですかそうですか」って言い回し。webで読む分には別に何とも思わないんだけど、紙に印刷されたこの言い回しを目にすると、なんつーか、すごーくイヤな気分になってしまうんですな。webの文体ってものはあるだろうし、それはそれで独自に広まって行くものであるのだろうけれど、それとは別に「本」賭して読者に提供するときに、あまりに安易にweb文体を持ち込んで欲しくない、という気がするのだが。しかもやってるのが、名手酒井昭伸。うーん、それが趨勢なのかも知れないんだけど、それでもこう、なんというか「紙媒体の文体」としての矜持、みたいなものを見せて欲しい気もするんだけどなあ。そんな風に思うこと自体が既に旧人類の証ですかそうですか(と、webでは使ってみたりする)。
前半がそんなわけで少々もたつき気味だった分、後半になってぐぐっと面白くなっただけにそこがちょっと残念。なんか知らんが私は今、本として出てくるものの文章に必要以上に「格調」を求めすぎているのかも知れないのだが、ううむ…。
(★★★)
前 | 2005年 8月 |
次 | ||||
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
28 | 29 | 30 | 31 |
全然別の話ですが…opera10周年記念でついに念願の広告窓が消え…いえ、正規ユーザー(というのか?)になれました。
あはは、私もいただいちゃいました。まあ、Opera6のころから付き合ってるんだから、二つぐらいもらっても、いいよね?<br>……ダメ?(^^;)