ばむばんか惰隠洞

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2005-08-29 [長年日記]

[Day] 発作的にお出かけ (23:22)

4048538888別に昨日でも明日でもなんの不都合もないんだけど、何となく外に出たくなって荷物の発送したあとそのまま三宮へ。うろうろと古本眺めたり暑いさなかにラーメン食ってみたり(神戸ラーメンで腹こわす体質になってしまいました。情けなや)ようやくコミック新現実(6)購入したり。あとはシネリーブル神戸で「ヒトラー 〜最期の12日間〜」鑑賞。155分、一瞬たりともダレない映画というのはちょっとすごいと思う。重い部分もあるけど。

それにてもあすなさん関連の本を買ったあと、立ち呑みでぷはーとしてるときにあすなサイトの高橋さんから電話をいただいたりしちゃうのは、やはり西手新九郎の仕業であろうか。や、頑張ります(何を)。

さてその「新現実」のあすなさん特集、これはなかなか立派なものであった。臼杵三郎名義のあすな作品を読んだのは初めてのような気がする。微妙にあすなひろし臭くなくしようとしつつも、やはり紛れもなくあすなひろしの線がでちゃってるよなあ、これは。

吾妻さんのマンガも読めるんだけど、んー、こっちは正直ああそうですか、って感じで。大塚英志にはこれ以上、吾妻さんを引っ張り回さないで欲しいような気がする。

[Chinema] ヒトラー〜最後の12日間〜

劇場版パンフ表紙 スタッフ
監督:オリヴァー・ヒルシュピーゲル
制作・脚本:ベルント・アイヒンガー
原作:ヨアヒム・フェスト
原作:トラウドゥル・ユンゲ & メリッサ・ミュラー
撮影:ライナー・クラウスマン
音楽:ステファン・ツァハリアス
美術:ベルント・ルペル
出演
ブルーノ・ガンツ
アレクサンドラ・マリア・ララ
コリンナ・ハルフォーフ/ウルリッヒ・マテス
ユリアーネ・ケーラー/ハイノ・フェルヒ
クリスチャン・ベルケル/トーマス・クレッチマン
公式サイト:http://www.hitler-movie.jp/

1942年、ヒトラーの秘書候補として数人の女性が第三帝国の中枢、"狼の巣(ヴォルフスシャンツェ)"に集められた。なかの一人、ミュンヘン出身のトラウドゥルが、かつてのミュンヘン一揆を想起させたのかヒトラーの眼鏡にかない、彼の個人秘書の職を得ることになる。それから3年、ソ連軍の放談が直接落ちてくるまでになった1945年のベルリンで、彼女はまだ、ヒトラーの秘書として地下要塞のなかにあった。ますます悪化する戦局のなか、その死までの12日間のヒトラーは、そしてその側近たちの動きはどうだったのかを描くセミ・ドキュメンタリー

まずはなんと言っても、155分という長尺を一瞬たりともダレることなくラストまで持っていく、制作スタッフの努力と役者さんたちの熱演に拍手を。20世紀最大最悪の怪物の最期を看取る映画としていろいろ示唆に富んだ作品になっている。これをしてなぜ今ヒトラーの人間性などを斟酌する必要があるのか、などという批判も出ていると聞くが、どうだろう、ヒトラーを完全にタガがすっ飛んだ一種の狂人と捉えて済ますことは、もうめったな事じゃあんな人間は出てこないよ、と自分を無理やり納得させる行為に過ぎないような気がする。これほどまでに様々な書物が著わされている人部であるのだし、その何冊かを読んでみれば始めはごく普通の人間であった人物が、偶然が重なったことですさまじい妄想に取り憑かれてしまった、というのは比較的容易に想像できる事ではないかと思う。つまり、「あんなヤツはそうそう出てくるものなんかじゃない」はずがない、ということな訳で、戦争指導という部分を離れれば、犬を愛し、周りのスタッフに気を使うことのできる優しい人物が、一旦妄想の支配に取り憑かれると、想像を絶する行動を取ってしまう、ということ、そしてその時、その人物が権力構造のピラミッドの頂点にいたとして、そのピラミッドの底辺の長さがどれくらいあるかで、凄惨な目に遭う普通の民衆の数も決まってくる、という部分をもぬかりなく描いた作品であると思った。

 ヒトラーを演じるブルーノ・ガンツの"ヒトラーぶり"があまりに迫真で、それで観に行ってみたいと思ったんだけど、他にもゲッベルス、ヒムラーあたりは我々が本などで読んでイメージするそれにかなり近い感じがする。ゲーリングもそうだけど、まあ彼の場合はデブに白服着せとけばいいってところもあるし(^^;)。エヴァ・ブラウンを演じたユリアーネ・ケーラーは、イメージよりもこう、くたびれた感じなんだが、そのくたびれ具合が逆にこの良くわからん人物にリアリティを与えている感じがする。シュペーア(ナチ中枢にあってこの人物はかなり立派なひとであったと個人的には思っている)は、いけてるような、少々恰幅よすぎなような。鉤十字スキーな諸君には、天才女性パイロット、ハンナ・ライチュがかわいいぞ、と申し上げておこうか(^^;)。ただ、お芝居に関してはもう、ヒトラーもすごいがゲッベルス夫人を演じたコリンナ・ハルフォーフがでたらめに壮絶であった。強烈な電波キャラであるゲッベルスを演じたウルリッヒ・マテスもなかなかだったが、奥様のコワウツクシサにはちょっと太刀打ちできない感じ。うん、1キロを切った距離に敵の大群が押し寄せているという状況下で、それでもナチズムを信望し続けることができる人物、というそのオーラ(善悪は措く)というものには、見る方を引きつけて離さない力があるのだろう。

映画は、このおかしな世界に迷い込む羽目になったごくごく普通の女の子が見た末期の第三帝国中枢と、彼ら中枢が植え付けた思想を捨てられないまま凄惨な市街戦に巻き込まれていく市民たちの姿がカットバックされ、その二つのお話のキーパースンとなるキャラクターの物語が交差して、最期に辛うじてそれなりの救いがもたらされたところでエンドマーク、となるわけだが、ここまでのお話の持って行き方はかなりうまい。特に、決して(そこそこ)安全な地下要塞にはいることができない市民たちの描写が、この映画を簡単に"ヒトラーの人間性にスポットを当てた映画"などと言い切ることのできない説得力を与えていると思うんだけどどうだろう。いい人であれ悪い人であれ、指導者の下には大量の普通の人間たちがぶら下がることになる。そして迷惑千万な指導者個人は、死んでしまえば自分の物語はそこで終るのだけれど、彼の下にある人々にとっては、そこからがある意味本当の物語の始まりになるわけで、それはヒトラーに近い位置にいたゲッベルス夫妻から、ほとんど縁もゆかりもないベルリンの市民たちまで、温度差はあるけど問題ののっぴきならなさ、という点では等しく平等に降ってくる。ヒトラーの死までの物語ももちろん重要だが、ヒトラーの死が確定したあとの、それまでヒトラーにしたがっていれば良かった人達が、物語の新しい章に進んでいくときの辛さ、苦しさ、悲惨さ、そして希望をもまた、この映画は頑張って描いているのだと思う。そのためにこの長尺が必要だったのだろうね。

一度信じてしまったことが間違いであったことを知るために、人はどれほどの犠牲を払わなければならないのか、そしてその間違いを正すために、さらにどれほどの悲惨を罪化さねばならないのか。一人の独裁者の死以上に、安易に一人の独裁者を奉ってしまった民衆が、その後どんな目に遭う可能性があるのかをシビアに描いて見せた映画と言えるんじゃないだろうか。それで「ヒトラーも考えたら可哀想なヤツだよな」と思ってしまう危険性も確かにある(し、実際可哀想な人間なんだろう)のだけれど、ある時期にはその「可哀想なヤツ」を心の底から信じていた膨大な人間がいたことも事実な訳で、で、その膨大な人間のなかに私たちもまた含まれているわけで、ヒトラーの戦争犯罪を糾弾する、というのはつまり、誰がヒトラーを作ったのか、という問題にも繋がってしまうよな、それはとても難しい問題だよな、というところに話は落ち着くことになるのかな

そんなもやもやを一時的にせよ晴らしてくれるかのようなさわやかなラストシーンも好印象。常にヒトラーの側にあったトラウドゥル(今まで書きそびれてましたが、大変キュートです)と、始め少年の単純な思いこみでナチズムに心酔していた少年の心の移り変わりと、それを態度に示し、そして最期には硝煙を抜けることに成功するくだりはすばらしい。良い映画でした。

(★★★★)


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