ばむばんか惰隠洞

«前の日記(2004-09-14) 最新 次の日記(2004-09-16)» 編集

カテゴリ一覧

Anime | AV | Baseball | Books | CGI | Chinema | Comics | CS | Day | DVD | Event | F1 | Games | Hobby | HTML | Kindle | Misc | mixi | News | Oldbooks | PC | Photo | SpFX | Stage | tDiary | Tour | TV | web | 逸級介護士


2004-09-15 [長年日記]

[Books] 空腹の技法

本書カバー ポール・オースター 著/柴田元幸・畔柳和代 訳
Cover Photo by Jesper Høm
新潮文庫
ISBN4-10-245108-0 \743(税別)

いわゆる「ニューヨーク三部作」や「ムーン・パレス」などで作家としての評価を高める前の、詩人オースターによるエッセイ、序文、自身へのインタビューを収録した小品集

これは先日のドタバタ東京旅行の時に読了していたもの。落ち着いたんでようやく感想を書くんですが、書こうと思ったことの大半を忘れてしまっている。歳は取りたくないものだ。

さてオースターといえば、その作品に常に通底しているトーンとして、「乾き」とか「飢え」みたいなものがあるような気がする。「飢え」といっても、こう、命に関わるような逼迫した状態のそれではなく、飢えてる自分を、ああ今自分は飢えてるなあ、と妙に醒めた目で見ているもう一人の自分がいて、で、自分でも飢えてる自分がホントの自分なのか、飢えてる自分を見ている自分がホントの自分なのかがわからなくなってて、でもそのことも実はそんなに大したことでもないよなあ、とさらに引いたところでそれを眺めるさらにもう一人の人間がまた現れるような、そんな世界かな、とこれは個人的な印象。そんなにたくさん、オースターの作品を読み込んだわけではないので外しているかも知れないけど、私が思うオースターの小説ってそういうもの。なので、そんな雰囲気が全編に漂う「ムーン・パレス」が彼の作品の中では一番スキだったりする。

で、そんなオースターの作家として評価を高める前の苦闘時代の売文稼業から生まれた文章を集めたのがこの本なんだけど、やっぱり後年の傑作小説と相通ずる、乾いた感じというか妙な空きっ腹な感じというのは当時から健在な感じがしてちょっと嬉しくなってくる。というかむしろ、このとき形作られた乾いた感じや空きっ腹感覚が、その後のオースターに大きな影響を与えた、ということになるのか。

という感じでなかなか興味深く読ませてもらった本ではあるのだけれども、反面小説家が書く文章以上に、詩人の書く文章というのは時として読みづらいものだなあと思ったのもまた事実だったりするわけで。結構読むのに時間がかかってしまったことでした。

それはともかく。一番最初に登場する文章はクヌット・ハムスンの長編「飢ゑ」を題材に取ったエッセイであるのだが、で、19世紀の文学者がその頭脳をふりしぼって描写する近代人の苦悩にオースターは注目するのだが、それは………

自分自身を失う恐怖が最高潮に達したまさにそのとき、突如彼は、自分が新しい言葉を発明したと想像する。クボオー(Kuboaa) ———いかなる言語にも属さない、いかなる意味も持たない言葉。

クボオー………。オレ、2ちゃんってもしかしたら近代文学の一方の地平を担っている世界なのかも知れない、と思ってしまった。ウモァー、ウボァー、キター………。

(★★★)

[DVD] 恐怖の獣人

映画からのスクリーンショットさてこちらもE70Vでは鑑賞不可だった、アーコフライブラリーの一本。「恐怖の獣人」。1958年AIP、監督ロジャー・コーマン、出演ロバート・ヴォーン、サラ・マーシャル、レスリー・ブラッドリー。「掟」に縛られて厳しい環境下で暮らす穴居民族たち。だが掟を超えて禁断の地に足を踏み入れれば、そこには部族全員を優に養うだけの食料は充分確保できるのだ。時代遅れな掟で自らの首を絞めている部族に反抗心を燃やす若者は、賛同者を募って禁断の地へと向かうのだが………

原始時代アドベンチャーと見せかけて実はSFだったんだー!(な、なんだってー!?)なんてのはB級映画の得意技だったりするんだけどこれもそんな作品。つかね、登場人物がみんなこんなにさっぱり頭刈ってる(サムネールをクリックしていただけますれば、無名時代のロバート・ヴォーン氏のご尊顔が見れますです)世界を、誰が原始時代だと思うものかね(w。

なんでもこの作品、コーマン御大はあんまりお気に召してないようだが、で確かにストーリーの部分で(なんせ絵的なハッタリはお金の都合でそうそう使えないからね)もう一声、ひねりが欲しかったかな、と思わなくもないけれど決してむちゃくちゃ悪い出来じゃあないと思う。いかにも低予算映画なお約束を踏まえた上で、最低でも一カ所、ショックを用意しておこうってあたりの映画屋の心意気、感じますですよ、ええ。

低予算ゆえ出演者もしょぼい(ロバート・ヴォーンだってこのときはただの無名の青二才だ)んだけど、しょぼいなりに精一杯の仕事はやってるんじゃないかな。

原題は「Teenage Caveman」。もともとは「Prehistoric World」(先史世界)なるタイトルが予定されていたのが、AIPの直前の作品、「I Was a Teenage Werewolf」が思いもよらずヒットしたもんだから、急遽「Teenage」の単語を織り込んだタイトルへと変更が為されたんだとか。この辺もB級映画らしいエピソードで、好きだわあ。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
asano (2004-09-16 09:37)

「Teenage Caveman」ですが、某有名監督の某新作映画はこれのパクリじゃないか、と某所で話題になってましたね。乱土さんなら某新作映画もきっとご覧になると思いますので、レビューの際にはにはそのあたりの感想もぜひぜひ。

rover (2004-09-16 10:50)

それより何より、まったく同名の「Teenage Caveman」って映画が2001年に作られてるんですね。プロデューサーにしっかりアーコフの名前があったりして。で、邦題が「獣人繁殖」。内容がしっかり想像できちゃうすばらしいタイトルですね(笑)。<br>シャマラン君映画は、うーんどうしようかなあ…


Google search
www.bumbunker.com
Web
2004年
9月
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

ここ1週間分の話題

傑作です

懐かしさ満点

妖精を観るには…

ジュヴナイルとしてなかなか良質

バナーが必要ならこちらを
バナー素材

古本屋やってます
特殊古本屋 軽石庵

2003年9月までのサイト

巡回先
ROVER's HATENA

あすなひろし追悼サイト
あすなひろし追悼サイト

twitter / karuishian
«前の日記(2004-09-14) 最新 次の日記(2004-09-16)» 編集
©1996-2020 乱土 労馬:l-rover@kobe.email.ne.jp