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家庭争議のもとになりそうやなあこれ。あ、そもそもこの本の山、お客さんがこちらの買取り価格にうんって言ってくださらなかったら、また箱詰めにして返却せんといかんのだよなー。あは、あはははは。
スタッフ
監督:エロール・モリス
製作:エロール・モリス/マイケル・ウィリアムズ/ジュリー・アールバーグ
撮影:ピーター・ドナヒュー/ロバート・チャペル
編集:カレン・シュミーア/ダグ・エイブル/カイルド・キング
音楽:フィリップ・グラス
公式サイト:http://www.sonypictures.jp/movies/fogofwar/index.html
IQ180の大天才、若くして初めて一族以外の人間としてフォード社の社長に迎え入れられた敏腕ビジネスマン、そしてケネディの「ベスト&ブライテスト」の一人として国防長官の要職にあった人物、ロバート・S・マクナマラ。ケネディ、ジョンソンの二人の大統領に彼が仕えていた時期とは、とりもなおさずアメリカが最悪の戦争であるベトナム戦争にどっぷりと浸かり、もがけばもがくほどその深みにはまっていた時期でもあった。あれから40年になろうとする今、マクナマラにとって戦争とは、政治とはなんであったのかが本人の口から語られる。
飛行機ファン、わけても現用米軍機ファンにとって、マクナマラという人は少々憎たらしい存在ではないかと思う。ミスター・スポックのごとく非論理的なこと、非能率的なことを嫌う論理と数字の人マクナマラは、国防長官に就任するや、それまでの海軍と空軍が独自に主力戦闘機をメーカーに発注し採用している状況をムダと決めつけ、全軍であらゆるミッションをこなせる一機種の万能戦闘機を配備するよう決定し、この決定の元に産まれたのがF-111。承知の通りF-111は、海軍と空軍からの要求仕様を満たすためにどんどん巨大化、かつ複雑化していき、あげく海軍はこのプロジェクトから手を引き(まあこの失敗のおかげでF-14が産まれたわけだけど)、空軍でもとても戦闘機としては使えないため、戦闘爆撃機として控えめな数が現役で使用されたわけでして(おかげでかなり長期にわたりF-4が世界中にのさばる事になった)、まあなんだ、頭のいい人が考えることは、案外現実に照らし合わせてみると迷惑なことにしかならないなあ、という良い見本になったわけで。
さてマクナマラ国防長官が現役だった頃、とは1960年〜1967年の7年間。この当時、テレビのニュースでは必ず毎日、ベトナム戦争関連の報道がなにがしかは伝えられ、1959年生まれの私も、彼が国防長官のキャリアを終える頃にはそこそこ人の名前も憶えられるようになってたこともあって、この戦争の関係者であるマクナマラとかレ・ドク・ト、と言った名前はなぜか今でも忘れない。「海の向こうで戦争が始まる」ってお話があったが、私がガキのときは実際海の向こうで戦争をやってたのです。それもかなり近場で。
そんなわけでマクナマラ、という名前は結構印象に残っていたし、ハルバースタムの本や何やかやを読んでみても、なんて言うんだろう、頭でっかちの人間が政策決定機関に参画すると、ろくな事は起きないんじゃないかという先入観を私に植え付けるに充分であったわけだが、では当の本人は何を考えて7年間の国防長官の職にあったのか、それは自身にとって満足のいくものだったのか、そうでなかったのか、を自分の口から語ってもらえるかも知れない、と思って劇場に足を運んでみたわけです。で、そっちの期待の方は、どうだろう、やはり満足のいく答えは聞かせてもらえなかったかな、と言う感じか。一言で言ってツッコミが足りない映画に見えた。マイケル・ムーア的えげつないツッコミもどうかとは思うんだけど、それでも突っ込まないよりは自爆覚悟でももうちょっと、突っ込んでみて欲しかったなあと言う恨みは残る。マクナマラのナマクラナ言い訳を聞かされてる感じが、ちょっとしてしまってね
そうは言っても観るべきところは結構ある。
当年とって85歳のおじいちゃんとなったマクナマラだがいまだに矍鑠としていて、その言葉の端々には、今もなお知力の高い人間なんだろうな、と思わせる雰囲気が漂う。この人をうろたえさせることが出来たらインタビューア、ひいては映画製作者の勝ちと言うことになるのだろうけれど、残念ながらそうはいかない。このじいさまの方が一枚も二枚も上手だ。このフィルムを見る限り、マクナマラは自分に置かれた立場の中で、精一杯論理と良心を貫いて行動してきたように見える。でも論理はたぶん間違いないと思うけれど、良心の方はどうだろう。知力に長け、全てを論理的に考慮して断を下す、というのは実は案外重たい責任を肩に背負うことになるのだけど、当時のマクナマラはその荷物の重さを考慮せずに、論理だけを前に出していたのではないかな、という印象はある。そのために自分の決定がどんどん間違った方向に進んでいってしまうと、自分ではどうしようもなくなってしまい、最終的には口をつぐんでそのことについては語らなくなってしまう、と言うあたりはなかなか見応えのあるシークエンスだ。いわゆる、特に日本の政治家に顕著な「あれをなにして」的腹芸が出来ない分、この人の示す方向性は常に峻烈で、それ故にうまく行かなかったときにはその傷口の深さもシャレにならんことになってしまう、と言うこと、で、そのことをこの人は、85歳になった今でも完全には理解できてないように見える、あたりがかなり興味深かった。
また飛行機好きの話が出ますが、米軍機の好きな人、また戦記物の好きな人なら、カーティス・ルメイというアメリカ陸軍の将星の名前には心当たりがあると思う。戦略爆撃の生みの親、とはつまり、戦争なんだから女子供まで殺すことも辞さない攻撃を是とする、作戦を実行した人。彼によってB-29は高々度からの精密爆撃を捨て、低空で侵入してそこら中に焼夷弾をばらまく戦法に方針を大きく変えるわけだが、この作戦の大転換の裏には、実は当時ルメイの部下であったマクナマラの進言があったのだそうだ。純粋に、効率的に戦果を上げるにはどうすべきか、のみを考えての進言であった、というマクナマラの証言、戦争に勝つためなら非戦闘員に10万の余分な死者が出てもいいのか、という点に関して、自分は立案者であるから、そこに責任を持つのは指揮官であるべきだ、という立場を崩さないマクナマラの態度というのは、その後のキューバ危機を経てベトナム戦争に至る流れの中でも、実はそんなに揺らいではいないのだな、と改めて思わせられる。この人はもう、個人の本分を尽くすという点では精一杯のことをやっているんだけど、その本分が世界にどういう影響を与えるのか、と言う部分については、呆れるくらい無頓着なのだね。それは私が斟酌する問題ではない、と即座に答えが出てしまう人達だから。
映画を作った人が最終的にマクナマラという人物をどう捉えたのか、今ひとつわかりづらいいところはある。このあたり、敢えてわかりやすい図式までお話を落としてくるムーアのドキュメンタリーとはちょっとスタイルが違う。それが見る側に、「これで判断してくれ」と言っているのか、「ここまでしか突っ込めませんでした」と言っているのかもすぐには判断できないのだけれど、どうだろう、一種の怪物に、その本質を探ろうと体当たりをしたは良いが、やはり敵の方が巨大で、相手の指先に切り傷をこさえるのが精一杯だった、ようなドキュメンタリーだったと言えるだろうか。なんにしても頭の切れる人物というのは厄介だなあ、ということは改めて強く感じたぜ。
(★★★)
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●今、グラっと来たら…そんなことを考えるワタシは人でなしですか、そうですか。<br> そうだよなあ(笑)
それより何より、酔っ払って帰ってきたオレが全部台無しにしてしまいそうで怖いずら。