ばむばんか惰隠洞

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2004-10-19 [長年日記]

[TV] 定期視聴番組

「ニニンがシノブ伝」、「機巧奇伝ヒヲウ戦記」、「特捜戦隊デカレンジャー」、「仮面ライダーブレイド」、「ふたりはプリキュア」。

デカレンジャー(#35:「アンソルブド・ケース」)は刑事物の定番、未解決事件を追う定年間近の老刑事物。エイリアンな老刑事も、やはりよれよれのコート姿で、名前もしっかりチョウ・サン。ジャスミンたんのお話としてみれば(ジャスミンたんに感情移入して見れば)まあそれなりに。でもチョウ・サン側で見てみると惜しいところでいい話になり損ねてたかな。犯罪には必ず動機あり。そこらの描き込み、ちょいと甘いんではないかいな、って感じで。

そんな事より来週がエラい事になりそうだな(w。

ブレイド(#37:「新たな運命へ」)の方もまあまあ面白い。ちょっと睦月くんの将来が心配ではありますが。

[TV] 月曜時代劇

テレビ朝日開局45周年記念、だそうな。「忠臣蔵」。初回は2時間スペシャルで内匠頭が切腹するまで。とにかくもう、豪華なメンツでございまして。テレ朝で一回はドラマで主役張った人間はみんな出てるんじゃないか、ってな勢いですわ。

ストーリーはもう王道も王道、吉良はひたすら憎々しく、内匠頭はひたすら清廉の熱血漢、という感じで。今後もたぶんワシらが「忠臣蔵」と聞いてイメージする、一番なじみの深い展開でお話は進むんでしょうな。それはそれで良い。んでも、キャストを見渡して色部又四郎の名前がないのがちょっと不思議。大石最大の敵は、今回のドラマでは千坂兵部って事になるのかな? 烈堂さんに続いて、仇役二連投?

[Books] 緋色の時代

本書カバー 船戸与一 著
カバーデザイン 清水良洋(Push-up)
小学館文庫
ISBN4-09-404322-5 \819(税別)
ISBN4-09-404323-3 \819(税別)

1986年アフガニスタン。精鋭ソ連空挺部隊"スペツナズ"に所属する4人の兵士の姿があった。熾烈な戦闘の続くアフガンで、人間性、などという言葉が冗談にしか思えないような光景を幾度も目にしてきた4人。彼らはとある目的のため、血の誓いを立てあった同士となる。その目的とは、彼らの戦友を強引に射殺した基地司令官の暗殺。敵襲の混乱に乗じて首尾良くその目的を果たした4人。そしてアフガンでの任務も終了し、彼らは故国へと帰る。だが、一度戦場で見たもの、体験したことどもは、彼らに計り知れない影響を与えていた。

そして2000年ロシア。かつてのソ連に置いて軍需産業が集中しているがゆえに閉鎖都市となっていたかつてのスベルドロフスク、現エカテリンブルク。二つの巨大な闇組織の下部組織として構想を続ける二つのマフィア・グループに、かつての血の誓いで結ばれた4人が集結しようとしていた。敵と味方に分かれる形で………

むせかえるように暑く、熱い冒険小説を書かせたら天下一品の船戸与一、文庫版最新刊。今回の物語の舞台はロシア。かつてアフガンに従軍し、それが元でどこか"壊れた"人間となってしまった、アフガンツィと呼ばれるアフガン帰還兵たち。彼らは過酷な戦闘のすえ帰国したは良いが、ソ連崩壊後の国内の混乱の影響をもろに受け、もはやまともな一般人としては生きていけないところにまで追い込まれていく。そんな彼らが行き着くのは闇社会以外にあり得ない。マフィアの一員として濡れ仕事に明け暮れる毎日を送るうち、彼らの精神はさらに病んでいく。行き着く先は破滅しかないと知りながら…

という、実に救いのない展開があらかじめ予想されているにもかかわらず、やはりフナドは上手いのだった。上下あわせて1200ページの大部を、ほとんどだれる事もなく一気に読み切らせてくれる。4人のアフガン帰還兵、彼らと浅からぬ因縁を持つかつてのKGB、GRUの上官たち、ロシアン・マフィアの暗躍のために欠かせない資金源、麻薬ビジネスの第一のターゲットとなる日本から派遣された捜査官とロシア人のその相棒、そして4人が血の誓いを立てる発端となった、殺害された兵士の弟、困窮を極める妻子に良い暮らしをさせたいだけの理由でマフィアの世界に身を投じる若い元兵士。これらのキャラクタが非常にバランス良く配置され、それぞれの物語が微妙に関連しつつカットバックしながら挿入されていく、このあたりの匙加減はお見事。

かつて「国家と犯罪」で、虐げられ、そこから這い上がろうとする人々に熱い共感とどこか哀しみを併せ持った視線を向けた船戸与一は、本書では国家の都合で過酷な戦場に送り込まれ、その後全く顧みられぬ立場に追い込まれてしまったアフガン帰還兵たちの、裏社会でもがき続ける姿を描写する。しかも彼らアフガンツィにとって戦時に置いては倒すべき相手であった、アメリカの援助を受けて活動するアフガーニと呼ばれるもとゲリラたちが、今の彼らには重要な資金源となるヘロインの供給源となっている、という歴史の皮肉もさりげなく込められている。ちなみにこのアフガーニと呼ばれる人々こそが、今はアル・カイーダの名で知られるテロリストたちに他ならない。我々はどうしても、アメリカを中心軸に据えて国際情勢を見てしまうけれども、例えば 9・11 テロに至る流れに関しても、アフガン戦争に端を発するアフガニスタンの人々、元ソ連兵士から見ると、また別な物語が見えてくるのだな、と思わせられた。本作に登場するかつてのアフガーニ、今は麻薬ビジネスの領袖となっているアラブ人はこんなセリフを吐く。

「そのとおりだ、あんたの言うとおり、これは歴史の必然だ。オレたちアフガーニはその必然に則り、唯一神アッラーのために行動を起こす。一、二年後には世界を震撼させるような事をやってみせる」

本書は1999年〜2001年にわたって雑誌に連載されたもの。この時点ですでに"9・11"はあらかじめ定められていたという事なのだね。このあたりの見通しの確かさもさすが船戸、と言う感じだ。

そういうわけで現代情勢における暗部を鮮やかに切り取って見せた、という点に置いては文句なしなんだけど、その分どうだろ、冒険小説のピュアな快感、みたいなものがストレートに味あわせてもらえたか? という点では少々不満も残る。多彩なキャラクター、多彩なエピソード、"現在"を強烈に意識せざるを得ない世界の描写。どれも大事なのだけれど、それが船戸与一が本来持っている、個人としての男の戦いの暑苦しいまでの魅力、と言うのを少々阻害してしまっている恨みはなしとしない、とも思えるわけで。終盤、やや急いでまとめに入っちゃったかなー、というあたりに、ほんのちょっぴりだけど物足りなさも残ったかな、という感想になる訳なのでした。

(★★★☆)


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