ばむばんか惰隠洞

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2005-03-01 [長年日記]

[CS] 八岐之大蛇の逆襲 (昨日の25:22ごろ)

書いてる最中に眠くなっちゃって。てことで昨日の続きです。

CS 日本映画専門チャンネルで「八岐之大蛇の逆襲」、1985年ダイコンフィルム、監督赤井孝美、出演高橋香具美/永山竜叶/米良健一郎/武田康廣。「文芸」に菅浩江の名前があってひっくり返りそうになっちゃった。「のーてんき」とか「大日本」とか、一通りダイコンフィルムの作品は見てるんだけどこいつだけは未見だったので興味津々。で、

よく作ったねえ、と正直思いましたわ。特オタを集めた上映会ではたぶん、拍手喝采物の映画だと思う。普通に小屋でかけてお客さんに見てもらうにはつらい映画だとも思うけど、でもまあなんだな、それでも「ゴジラvsスペースゴジラ」よりはマシかも知れないな(w。

特撮、を考えるときに実はかなり重要なウエイトを占める部分に、「マズい画はなるべく見せない」ってのがあると思うんだけど、この映画はそこを実に巧妙にやっていると思う。アマチュア映画だもの、特撮パートのショボさは隠しおおせるわけがないんだけど、この映画ではそういうショボい映像を、大量のライブ映像に混ぜ込んでやることで、見てるこっちを「ショボいじゃんその絵」と思わせる手前で別のクオリティを持った映像に切り替えてみせることで、実はどうしようもなくショボい映像を、それほどショボくないじゃん、と錯覚させるような効果を上げることに成功している。カットの割り方が上手いのだね。貧乏ながらもいい絵を、ってスタンスが全編に浸みててそこはたいそう気持ちいい。

んでもって思うのは、やっぱりパイロって難しいんだな、ってことですな。この映画でも当然爆発シーンは結構あるんだけど、どかん! の迫力はあるんだけど、炎と煙の持続時間が短いのね。ぐわっと盛り上がった炎と煙が、次の瞬間には消えてしまっちゃう。この辺の火薬の選定とか爆発のさせ方のテクニックとかって、実は意外に奥深い物があるのかも知れない。あんまり一方的に火薬バカと決めつけたもんでもないってことですか。いやもちろん爆発ばかりで肝心の被写体の姿が全然見えねえ、ってのもどうかと思うけどさ。

それはそうと。

この作品を見た金子修介は、自らの初めての特撮映画の特技監督に樋口真嗣の起用を思い立った、とは自身が「ガメラ監督日記」の中でも書いていたけど、金子修介的怪獣映画のフォーマット、にもこの作品、実は結構な影響を与えたんじゃないかなあとか思ったりして。キワモノ系テレビクルーの位置づけとか、やや戯画化された戦車隊長とか、GMKのBSデジタルQや西村雅彦に通じる物を、この映画であらかじめ見てたのかなあ、なんて。まあ特撮物的にはどれもお約束に近いものでもあるわけですけど、ちょっとGMKの逆デジャビュみたいな物を感じちゃったりしたもので。

[F1] 今週末からF1ですよ (18:46)

さてさて、いよいよ今週末からF1開幕でございます。今年はずいぶんと大きなレギュレーション変更があったり、新しくトルコGPなんてレースが追加されたりする訳で、楽しみなような、なんか心配事たっぷりなような。先日721でやってた開幕直前スペシャルを参考に自分用覚書。

ローダウンフォース化
フロントウィングの最低地上高が5Cm上がり、リアウィングの始まりがリアタイヤの軸線と同じ位置からに。さらにリアタイヤまわりに大きな隙間ができることに。思ったほど効果(悪い方への、だけど)は上がってないらしいけど。
2レース1エンジン化
これ、聞けば聞くほど訳わからん規定だよなあ。ええと、フリー走行で壊したらエンジン積み替えて決勝グリッドは10番落ち、もう一回やったら20番落ち。予選一回目で壊したら問答無用で最後尾スタート。で、決勝で壊したら当然リタイヤで次のレースは新エンジンでオーケー、ついでに(壊さなくても)レースをフィニッシュできなかった(完走扱いとされなければ)交換オーケー。で、このエンジンは1レースでお役ご免、てこと? 川井ちゃんじゃないけど偶数レースだけ命かけてきそうなチームが出てきそうだよなあ。あんまり意味ないレギュレーションじゃないの?
タイヤ規制
予選、本選を通じて1セットのタイヤしか使えない。走行中危険と判断されたときはフリー走行で使用したタイヤに交換可能。ただしフリー走行で使えるタイヤも1セット……ってこれ、ヤバくない? 予想外のアクシデントで、去年までならまだ走れたクルマが問答無用でレース続行不可能、てことになりかねないし、どこかのレースでタイヤ自体がそこに耐えられない構造だったりしたら、そのタイヤ履いてるチーム全滅、とかになっちゃわない?
予選方式
去年の鈴鹿方式がウケたわけでもないだろうけど、土曜日に一回目、日曜日、決勝レースの4時間前に予選二回目、だそうな。確かに去年の予選の一回目も意味なさげではあったけど、何も決勝当日に予選しなくてもいいと思うんだけどなあ。
決勝方式
ハァ? スタートディレイは2秒後に再スタート? 無理だろそれ。赤旗中断中も時計は止めない? えー? 予選方式なんか見てるとテレビ局に厳しくないか? って思うんだけど、本選の方はかなーりテレビ中継向きになってるってことなのかな。でも去年のラルフの事故みたいなデカい事故があったりすると、実質レースが半分ぐらいのボリュームでハイおしまい、とかになっちゃわない?
各チームの新車
恒例の川井・今宮・津川採点ではフェラーリ、ルノー、マクラーレン、BAR、ウィリアムズ、トヨタ、レッドブル、ザウバー、ジョーダン、ミナルディの順。ウィリアムズ大丈夫か? 私ならフェラーリ、マクラーレン、ルノー、んでウィリアムズとBARがガチンコ、油断してるとレッドブルがひょいひょいポイント稼ぐんじゃないだろか(特に序盤)、な感じかな。トヨタはどうだろね、ドライバーは一級品だけど。今のところ「乗りやすい」って評価しか聞こえてこないのがなんちゅーかトヨタらしいというか。

なんてな感じ。やや不安材料が多いような気がするなあ。シーズン中のレギュレーション変更、なんて事態はありなのかしら。とりあえず今年のコスワースは結構良いらしいので、ミナルディ頑張れー、ということで。オーストラリアは曇り模様だとか。タイヤにはラッキー、かな?

[web] 今日のspam (22:23)

送り主は「ヒロシです」、Subjectは、

自身あります!

藻前はイラネ。

[Books] 魔法 (23:39)

本書カバー クリストファー・プリースト 著/古沢嘉通 訳
カバーイラスト 服部幸平
カバーデザイン 守先正+桐畑恭子
ハヤカワ文庫FT
ISBN4-15-020378-4 \920(税別)

爆弾テロの巻き添えになり、重傷を負ったプロカメラマン、リチャード。事故の影響で、彼は過去の記憶を失ったまま、入院生活を続けている。そんな彼の許に、いらだちの種でしかないジャーナリストに伴われてやってきた女性、スーザン。リチャードにとって初対面としか思えない人物であった彼女だが、彼女の言葉を信じるならば、かつてリチャードと彼女は恋人同士であったというのだ。自らの過去を解き明かすきっかけとなってくれるかも知れないスーザンに、徐々に惹かれていくリチャードだったが……

とまあ、まるでゴダード作品だなあこれ、と思ってしまうような困ったちゃん中年男と謎の美女の、過去にまつわるミステリの解き明かしの旅、そこにはロマンスもあれば不可解な幾つかの要素もまた混在して、ってあたりでそう思ったわけだけど、この、比較的まったりとじれったい(退屈、とも言う)導入部を我慢して読んでいくと、ある日突然話は急展開。ここをあんまり詳しく説明すると、未読の人に悪いような気がするので、ここではあれですな、発端から終焉までの一本のお話があったとしても、そのお話は語り手によってその見た目も、お話が語ろうとしていたことも、全く違うお話になってしまうこともある、と。さらにここに、読んでいると「え、どうして?」とこちらを混乱させる仕掛けが次々と登場し、「ワタシハカンジンナトコロヲヨミトバシマシタカ? 」と思わずページを繰り戻し、「ヤッパリソレデマチガイナイヨネ」と不可解な気分を引きずったままさらに読み進めていくうちに、「モシカシテアレハアレデコレモアレナワケデスカ? 」とやや薄気味の悪い(この辺でSF風味というかファンタジー風味が加算されてくる)予想が頭をもたげ、最後の最後でとんでもないオチが待っている、という。

ていうかマイトガインですかこれはー。わたしゃびっくらこきつつ、なんか微妙に笑いがこみ上げてきてしまったぞ。

いやそれはともかくこれは凄いわ。「奇術師」もたいがいだったけど、あちらはそれでも「瞬間移動」と言うテーマのSF的な味付けの部分で、やや俗な(と言っていいのかなあ)説明の付け方をしてしまった恨みがある(あるけど、最後の最後の最後でもう一回、でぇッ! って思わせていただいたので、あれはあれでそないに不満はないんですけどね)んだけど、こっちは徹頭徹尾、わからんもんはわからんままに、その存在感だけをじわじわと強めてくる。そして「奇術師」同様、もやもやとしていた物が終盤になって一気に、とんでもないどんでん返しと共に一旦吹き飛ばされ、その後にはさらに不可解で気になる物が残っている、というストーリーの組み立て方のうまさ。感服しますわ。ぱっと見には明るく穏やかに見えるエピローグが、実はたとえようもなく救いのない物である、というオチの付け方には慄然としますな。いやほんと、恐れ入りました。

あ、あと、読み終わってからこのカバーイラストを眺め直すと、なかなか味わい深いもんがあります。グッジョブです、これ。

(★★★★☆)


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